SYMPOSIUM

11月3日(木)「スカルノ国際共同研究シンポジウム ~21世紀の現代からスカルノ思想を考える ~」 "Symposium on the international Soekarno Study" を行いました。

日時:11月3日(木・祝)9:30~13:30
場所:世田谷キャンパス34号館B303教室

講演者:
(基調講演)
「世界秩序とパンチャシラ」
プティ・グントール・スカルノ氏(インドネシア共和国国会議員、スカルノ初代大統領 御令孫、国士舘大学大学院政治学研究科客員教授)

(研究報告)
「真のスカルノ像を求めて」
ボニー・トゥリヤナ(歴史ジャーナリスト)

「ブン・力ルノと国民の文化・教育」
ダダン・ウマル・ダイハニ(トリサクティ大学 産業工学部 教授)

「スカルノのナショナリズム政策とバティック ~インドネシア国民文化の創造~」
戸津正勝(国士舘大学名誉教授、ハリウッド大学院大学客員教授)

「日本ーインドネシア関係と日本におけるスカルノ研究」
高地薫(東京大学非常勤講師)


Date: THU, 3rd November 2016, 9:30~13:30
Venue: Setagaya Campus, 34th Building, 3F, B303 Classroom

Speakers:
(KEYNOTE SPEAKER)
Mrs.Puti Guntur Soekarno
(Member of MPR, Granddaughter of President Soekarno, Visiting Professor at Graduate School of Political Scienece, Kokushikan University)

(Study Reports)
Bonnie Triyana(History journalist)
Dadang Umar Daihani(Professor at School of Industrial Engineering, Tri Sakti University)
Masakatsu Tozu (Professor Emeritus at Kokushikan University, Visiting Professor at Hollywood Graduate University)
Kaoru Kouchi(Part-time Lecturer at Tokyo University)


コーディネーター: 柴田 德文(政経学部)
Coordinator: Tokubumi Shibata (Faculty of Political Science and Economics)


インドネシアは、多様な民族・社会・文化・言語を抱える国である。インドネシア初代大統領であるスカルノは第二次大戦の混乱期にこの多様な地域をまとめあげ、「多様性のなかの統一」を国是とした国民国家を誕生させた。彼のナショナリズム政策は「パンチャシラ」という建国五原則に表わされた、極めて柔軟で、他国民のナショナリズムとの協調をも目指した。
当シンポジウムは、スカルノという史上稀有な人物の思想を再検討することにより、国際的な接触と相互存在が深化した現代において、今一度、国民国家のあり方を問い直すことを目的としている。
当日のシンポジウムにおいては、現代の国際的・国内的な諸要求に応えうるナショナリズムのあり方の探求と、インドネシア・日本間の相互理解を深化させるべく、次に掲げる要旨のとおり、基調講演と研究報告が行われた。

(基調講演)「世界秩序とパンチャシラ」
プティ・グントール・スカルノ氏
人口の急増、極端な経済格差、搾取、紛争、人間の疎外などの諸問題があふれる現代において、「パンチャシラ」(インドネシアの建国五原則)には、新たな世界秩序を構築するための道筋を示す可能性がある。しかし、パンチャシラの基本的な価値が現実的かつ実践的なレベルにおいて有効であるためには、ブン・カルノ(スカルノの愛称)の思想の核心に迫り、それらを今日的な文脈に沿って解釈しなければならない。その前提として、地道な協議と協力が求められる。そのような前提に基づいてこそ、パンチャシラが世界の新秩序に向けての光明となるであろう。

(研究報告1)「真のスカルノ像を求めて」
ボニー・トゥリヤナ(歴史ジャーナリスト)
本報告は、歴史教科書において描かれるスカルノ像について検討した。スハルトの時代には「脱スカルノ化」すなわち歴史におけるスカルノの役割の削除、あるいは過小評価や否定的評価が行われた。独立宣言者としてのみスカルノは取り上げられ、彼の考えは伝えられていないか、あるいはバランスを欠いた伝えられ方をしている。本報告では、それらの教科書で学んだ若い世代におけるスカルノに関する議論の傾向、またSNSがスカルノに関する議論を広める役割についても考察を広げた。

(研究報告2)「ブン・力ルノと国民の文化・教育」
ダダン・ウマル・ダイハ二(トリサクティ大学教授)
本報告は、ブン・カルノが教育の発展に果たした役割を論じた。ブン・カルノは、民族アイデンティティ構築の重要性を強調するが、そこでは自尊心を持つ民族であるための知性、つまり内実のある人的資源の必要を説いていた。独立直後に様々な大学が設立され、独立後 10 年の内にインドネシアのほぼ全州に大学が置かれた。地政学的な意図から、インドネシアの文化に根付いた科学技術の中心地を設立し続け、それが文明発展の基礎となった。ブン・カルノは、アイデンティティが確立し、文化的価値に根ざした人間を育成するための洞察力を持っていた。

(研究報告3)「スカルノのナショナリズム政策とバティック ~インドネシア国民文化の創造~」
戸津正勝(国士舘大学名誉教授、ハリウッド大学院大学客員教授)
スカルノは、多民族国家インドネシアにおける国民統合の困難さを当初から見抜き、「ビンネカ・トゥンガル・イカ(Bhinneka Tunggal Ika):多様性のなかの統一」という国家理念の下、多様な民族文化をナショナリズムの枠組みのなかに再編成しようとした。その代表的具体例として、ジャワの民族服飾としてのバティックに注目し、それを国民文化にまで高めようと試みた。本発表では、どのようにすれば、ある特定の民族の伝統文化であるバティックをインドネシア人全体が共有できる国民文化へと発展させることができるのか、そのための具体的方策についての考察を紹介した。

(研究報告4)「日本―インドネシア関係と日本におけるスカルノ研究」
高地薫(東京大学非常勤講師)
本報告は、戦後日本・インドネシア関係を概観し、その中でスカルノが果たした役割を確認するとともに、戦後日本におけるインドネシア研究でスカルノがどのように扱われてきたのかを紹介した。バンドゥン会議(1955年)後、早稲田大学、東京大学などが研究者を輩出し、スカルノやその思想を中心とした研究は多くはないものの、土屋健治らの業績を中心に、日本におけるスカルノ研究は世界的に見て突出している。その背景には、スカルノらインドネシアのナショナリストと人的交流をし、その人脈を軸として発展してきた紐帯があった。

その後、フロアを交えて盛んなディスカッションが行われ、それらを受けて、グントゥール・スカルノ氏(プティ議員父君、スカルノ初代大統領ご長男)からコメントを賜った。


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