2009年度 世田谷市民大学 連続講義


「現代アジア都市の肖像」

第7回 藤田先生 6月10日 5/12
サイバー・アジア 都市のデジタル・ネイティブたち
■「デジタル移民」から「デジタル・ネイティブ」へ
ここは僕自身にも言えるんですが、40代の人間っていうのは多かれ少なかれ「デジタル移民」です。元々はアナログの社会にいたんだけど、デジタル社会の進展に合わせ、自らをデジタル対応させていった世代の人間たちです。その上の世代というのは「若いのに任せた」といって、あまりデジタルのほうには触れなかった人達です。つまり、デジタル第一世代で、やらなきゃ生きていけないというのが僕ら40代だったんです。
今、楽天とかヤフーとか、日本のIT企業のトップといわれる人は、ほぼ40代です。つまり、「俺はこっちに行くぞ」と、最初のデジタル社会の入り口に飛び込んだ人たち。ちょっと急ぎすぎたのが30代。まだあまりよく社会がわからないんだけれども、千載一遇のチャンスとばかり、ビジネスに入っていった世代。「ホリエモン」に象徴される層です。ちゃんと銀行業や、メディア、コンサルタント業を経てITベンチャーに入っていった40代は、みんなきちんとそれなりに成功しています。
ところが、これらの次に続々と生まれつつある層、世代が「デジタル・ネイティブ」です。先日、NHKの番組でも取り上げられていましたが、この言葉を最初に用いたのは、アメリカの作家であるM.プレンスキー、またIT関連コンサルタント会社であるガートナー社(Gartner)は、2008年に「デジタル・ネイティブ」をテーマにした大規模なカンファレンスを開催しています。実はこの世代というのは、幼少期からコンピュータや携帯電話が身近にある。1980年生まれ以降、といいますと現在29歳以下です。85年以降生まれだと、学校でそろそろ正式な情報教育というのが始まる世代です。ところが、なかなかきちんと教えられる先生がいなくて、むしろ生徒のほうが出来る、という現場が90年代はまだまだあった。そうすると彼らは自己流で覚えていく。
1990年生まれ以降は、まさに真性「デジタル・ネイティブ」。物心ついたころからインターネット、コンピュータ、携帯電話が、目の前にあるんですね。今まさに彼らは10代です。アナログな時代を知らない、アナログとは何かということを彼らはあまり深く考えもしない。たとえば、僕が授業をやっていても、コンピュータの授業は面白がってついてきますが、メディアの歴史という話をすると、「そんなことがあったのか」といわんばかりで、全然ピンとこないわけです。レコード、カセットテープというものを知らない。いきなりMD、デジタル音楽ですね。だから、彼らとのメディア感覚には、一つの大きな壁があるんだと思ってください。そうしないと、彼らの当たり前と思っていることに対して、僕らは違和感を持ち続けちゃうんですね、どうしても。わたしの世代は、そういう橋渡し的な世代なんで、いつも一生懸命上の世代と下の世代の話を通じさせるということばっかりやっている部分はありますが(笑)。

■IT実験国家としての韓国
この写真は韓国のソウル、江南にあるCOEX(コエックス)という有名なショッピングモールです。有名な繁華街で、おしゃれなところですね。この中にメガウェブステーション、要するにインターネットカフェがあります。おそらくソウルで一番きれいなインターネットカフェです。数年前の撮影なので、今はもっと新しくなっているかもしれませんが。ここに若者が来て、オンラインゲームやインターネットができるという場所です。私がここを最初に見た頃にはもう超満員で、まだ家にコンピュータがない、ネットにつなげられないという学生が、どんどん来て遊んでいたという時期でした。オンラインゲームをしながら、ネット上でチャット(おしゃべり)をする。お互いの顔まで見せるビデオチャットというものもありますが、こうやって友達のみならず知らない人とでもどんどんネットで会ってコミュニケーションする、そういうような状況は、実は既に10年以上前から韓国では起きている。彼らはもう今社会人になっています。このようなネットカフェ(PC房)というものが、実は韓国のネット社会の形成を語る時に、非常に大きなポイントになっていました。