2009年度 世田谷市民大学 連続講義


「現代アジア都市の肖像」

第7回 藤田先生 6月10日 8/12
サイバー・アジア 都市のデジタル・ネイティブたち
■変貌する情報環境

今回のオバマ大統領が強烈なインターネット選挙をやって勝ったということは皆さんご存じかと思います。おそらく前例である韓国を徹底分析したのかもしれません。それによって、アメリカに新しいコミュニケーションの流れを作ったんじゃないか。この先、日本はどうするのかなと僕は思っていますが。このメディア・コミュニケーション環境は日本だけじゃなくアメリカ、韓国、中国(都市部)は、ほぼ同じ状況に入ってきた。しかし、それを手放しで喜ぶわけにはいかない。なぜなら、ネットの最大の問題は、個人が社会と「直接」対峙する環境が生まれたということです。一般の人々にその環境を受け入れることが出来る準備があるのか、リテラシーがあるのか。社会的経験が豊富だが技術的環境に疎い中高齢者たちと、社会的経験が少ないが技術的環境には馴染みやすい若者たち。双方がここである種のわからなさを抱えている。本来十全なコミュニケーションとは、社会性と技術の統合された表現です。社会と技術の関係が、あたかも振り子のように揺れ動く状態に我々は入ってきているんだなということを、強く感じています。
かつての情報・コミュニケーション空間は、たとえば子供の場合、個人の周りに家庭という物理的な枠があって、新聞やテレビを家で見、電話を取る、親が情報を管理するというパターン。その外には更に学校が守り、地域が守る。会社員の場合は、会社が人生の面倒を見てくれる形で、社会に対し、物理的な枠が形成されていた。その先に国家、社会があった。インターネット、パソコンというテクノロジーの本質は、全ての人をまず「個人」にするということです。今の若者の中に起きている様々な問題、事件の共通の特徴というのは、これに対処ができなくなったということだと僕は思っています。

■サイバーカスケード
 昨年6月、韓国でアメリカの輸入牛肉に反対する10万とも70万とも言われるキャンドルデモが昨年おきましたね(写真右)。これには小学生、中学生、高校生が多数参加している。この参加意識、行動性は、どこから来るのか。ネット端末として進化を続ける携帯電話が大きな役割を果たしつつある。ネット環境によって社会の集団心理に大きな変化が起こりつつある。韓国は、この集団心理が特に大きく動く国に見えます。技術がさらにそれを後押ししている。
2005年の中国で起こった「反日デモ」というものも、中国人全体が怒り行動しているんだというのは大間違いで、あれは中国都市部の大学生や若者が中心で、日本や日本人についての具体的なイメージ・知識がほとんどない状態で起きた、ある意味反射的なコミュニケーションとして動き出した一つの社会現象にすぎないと思っています。もちろん、90年代の愛国教育の「下地」「成果」もありますが。中国におけるインターネット利用率は、30歳以下の人が6割から7割を占めます。つまり中国における情報環境やネット環境、ネット世論というのは、基本的に30代以下の人達、特に学生や若手ホワイトカラーが作り出しているものなのだ、ということです。私たちはある偏向した過剰な環境に対し、過剰な反応をし続けているのではないか、とも言えます。