2009年度 世田谷市民大学 連続講義


「現代アジア都市の肖像」

第7回 藤田先生 6月10日 9/12
サイバー・アジア 都市のデジタル・ネイティブたち
■中国ネット社会のキーワード
次に、中国のネット上で起きている特徴的な現象を、キーワードを軸にまとめます。

①80后
中国の80年以降の生まれの若者たちで、現在の中国インターネット社会の中心層です。彼らは「小皇帝」と呼ばれる、中国一人っ子政策の申し子でもあります。親の期待を一身に背負い、熾烈な受験戦争を潜り抜け、やがて大人になり、高度経済成長、消費社会、ネット社会の中心に位置するようになりました。2億人を超える層になりつつあります。

②海亀族
80年代以降の改革開放路線の中、海外留学を経験した層であり、近年の中国の経済成長に期待をかけ、アメリカやヨーロッパから戻り、自国でビジネスを興し始めた層。80后より、ひと世代上の層にあたります。現在のネット社会、新ビジネスの基盤を作っていった中堅リーダー層です。この①と②によって、中国は新たな中間層が形成されつつあります。

③月光族
これは日本のかつてのフリーター層に近いのですが、決してプアではなく、豊かな親の元、稼いだ金をボンボン使ってしまって「未来のことはもう考えたくない」という、正に刹那的な生き方をしているフロー・リッチなライフスタイル層。北京、上海などの都市部に増えてきています。

④短信
携帯電話のショートメールのことです。短い文章で相互にコミュニケーションしあう。中国で最も頻繁に使用されています。彼らはこれで、話すようにメールを送り続ける。旧正月が開けるときに一斉送られる「おめでとう」メールで、中国の電話会社はパンク状態になるというくらい、数億ものメールが一気にやりとりされると言われています。 反日デモ、北京五輪聖火リレー、四川大地震において、これが全国民の共通したコミュニケーション・ツールとなりました。

⑤博客
中国版ブログです。ブロガーは「博主」。2005年頃から増え始め、その利用(開設)者は、2007年末時点で、既に1億人に達しています。内容は、通常身辺雑記が多いが、経済・金融系も突出している。中国の女優「徐静蕾」(シュー・ジンレイ)のブログは、閲覧回数2億回を突破したと言われています。他、徐小明、韓寒等のブログも有名。中国四大ポータルサイトは、いずれもブログセクションに力を入れ、個人コンテンツ発信のプラットフォームとなりつつある。ちなみに、中国のブロガーはほぼ実名登録。このように、個人のブログがマスメディアに匹敵する巨大な発信力を持ってしまうというような状態が、今中国でも起きつつあります。

⑥百度(baidu.com)
中国最大の検索ポータルサイトです。あらゆる海賊版の音楽、映像ファイルをダウンロードできるサイトとも言われています。米国留学の海亀族、李彦宏が1999年に設立した会社です。実はこのサイト中に、大変問題になっているMP3、音楽の検索ダウンロードサイトがあります。あらゆる音楽をここで無料で聴けます。かなりの部分が海賊版です。だから、中国の音楽産業というのは、CD販売ではほとんど儲からない。むしろコンサートを行ったり、テレビに出て収益をあげていくしかないと言えます。留学生たちに聞いても、著作権認識は、ほとんどない。まだまだきちんとした教育もされていないようです。
ともあれ、この驚異的な検索エンジンのおかげで、中国の若者は世界の様々な作品、著作物を検索し、知っていく。多くの著作権問題を内包しながらも、お金のない人でも世界の情報、作品を存分に見聞きすることが出来る環境が出来上がってしまった。まさにネット文化の両義的な側面です。ちなみに、昨年より、日本でのサービスも開始しています。