2009年度 世田谷市民大学 連続講義


「現代アジア都市の肖像」

第8回 藤田先生 6月17日 3/10
ユビキタス・アジア 「環境化」する情報技術と都市
これらがこれからのモバイル社会のキー・デバイスになろうとしている。もちろん、これは無線のネットワークです。無線というのは、有線と違い接続されている状態が見えない。従来都市は物理的な空間として「見える」ものでしたが、情報社会下での都市空間は、もうひとつの「見えない」都市空間を電波により形成しつつある。もうひとつ大事なことは、これがそれぞれの国で別々に進む技術開発・競争ではなく、全世界的に同じ情報・通信の基礎技術による開発、市場投入、競争が始まっているということです。すなわち、情報商品はほとんどが「世界商品」のバリエーションとして、世界中に普及しつつあるということ。今日、情報技術は、常にグローバル化への必然性を持っているということです。

■ネットワーク化されるICチップ 無線ICカード、ICタグ
皆さんもご存じの、電子切符です。これは無線化されたICチップです。この中に、アンテナと極小のコンピュータ・チップが入っています。だから、改札機でタッチすると、近距離通信が行われ、情報がやりとりされます。これは、日本のみならずアジアでは、シンガポール、香港、台湾、中国では大都市部全域、ほぼ同じ技術で普及してきています。特にシンガポール、香港においてはソニーのFeliCaという技術が採用されています。また、これは簡単にいうとカード型電子マネーでもあります。だから、これらは電子財布としても、コンビニエンスストア等のチェーンにも広がりつつあります。他のアジア都市部での共通利用、デファクト・スタンダード(事実上の標準)化にも向けた実験が進んでいます。
これは、開発中の極小チップです。ここに点のようなチップがあります。もう1mmどころでない、私たちが見えるか見えないかくらいの本当に小さいチップにアンテナを付け、データ通信を可能にするというところまで、日本の技術は進んでいます。これをあらゆる商品のタグ(荷札)につける無線ICタグ化も、もはや開発・実験を超えて実用段階に入りつつあります。1枚の紙にコンピュータ・チップをつけるということも、可能になっています。さらには、「電子ペーパー」というものまでが動き出しているわけです。印刷会社が、率先してこの技術開発に入っているのは、21世紀の大きなパラダイム・シフトがメディア環境に起きていることを意識してのことでしょう。

■ユビキタスの各分野
このように、ユビキタス関連技術は、経済社会の各分野に拡がってきています。もともとコンピュータ・チップは、あらゆる電化製品に組み込まれて、コンピュータ制御がされていました(ファームウエア)。それらは炊飯ジャー、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジなどを見てもわかります。これらは以前から我々の生活用品としてあったものですが、ネットワーク化はされていなかった。現在構想されているユビキタス・ネットワークの核心は、あらゆるモノに無線ICチップをつけることによりネットワークし、それらが有している情報をリアルタイムで把握する情報環境を作るというものです。