2009年度 世田谷市民大学 連続講義


「現代アジア都市の肖像」

第8回 藤田先生 6月17日 7/10
ユビキタス・アジア 「環境化」する情報技術と都市
■韓国「行政のIT化」事例
ソウル特別市江南区で、2002年より始まった電子区役所システム「Cyber City Smart 江南」です。インターネットにより区役所関連サービスの大半が、自宅のPCやこのマルチメディアKIOSKで、可能になっています。江南はどちらかと言えば、ソウルの高級住宅街です。このマルチメディアKIOSKは、駅やコンビニ、デパート等、街の中でよく人が通る場所に置いてあります。そこで行政のあらゆる手続きを24時間出来るようにしようというシステムです。ちなみに、本人確認は住民登録証と指紋確認です。このシステムにより役所への訪問者数が激減し、区役所の業務が効率化しました。ITによる行政の効率化です。このためには、自治体のあらゆる業務・書類が、事前に電子化されている必要がある。ここでは、既にそれが達成されている。実は、日本が電子政府構想「E-Japan」をスタートさせたのもこの年です。日本では、電子自治体は、遅々として進んでいません。
駐車違反取り締まりシステムもユビキタス化してきている。警官が違法駐車車両をその場で撮影しデータ転送、罰金処理システムへとつなげていく。違反者もまたネットを通じて支払う。これで、罪の意識が醸成されていくかどうかは、ちょっとわかりませんが。そういう部分も自動化していく。ここは、世界のこういう行政IT化の中でも、抜きん出た地区だと言われています。この成功事例には、江南ならではの住民層のある種の均質性が可能にしている、行政の電子化への相互納得のようなものを感じます。シンガポール同様、区切られた一つのモデルの完結性があるということです。都市部全体、国家全体ではどうなんでしょうか。このように韓国は、各地で行政のIT化、ユビキタス化が進行しています。

■図書館の電子化 ユビキタス社会における情報サービス機関としての図書館
次は、どこにでもある公共施設の代表である図書館について、アジアでのIT、ユビキタス化導入事例をご紹介します。
図書館は、今世界で大きく変わりつつあるものの一つです。ユビキタスにとって図書館というのは非常に面白いモデルで、人類にとってと言ってもいい大きな可能性があります。しかし、図書館を「電子化」するってなんだろう。おそらく、2つあります。1つは、最近、図書館の本に無線ICタグというのをつけることで、蔵書の管理の自動化、リアルタイム化、効率化をする図書館が増えています。これは、世界的な状況です。究極の多品種少量商品である本というのは、管理が大変煩雑なものです。出版業界のユビキタス化に先立ち、まず公共図書館のユビキタス化が進行しているのが、現状です。
さらに、IT化が進むと何が起きるかというと、これは非常に大きな話で、「本と文明」というテーマにも関わるんですが、本の中身を全部コンピュータにスキャンし蓄積していくというビジョンです。それは既に「本」なのかどうかという話ですが、実際にこれはアメリカでGoogleと大学図書館、公共図書館が中心になり、動いています。もちろん本がなくなるわけじゃないです。図書館に行かなくても、必要としている本の内容を検索し、閲覧できる図書館のDB。これは、アメリカのみならず、シンガポール、韓国等アジアIT先進国でも、こういう動きは進行しています。