2009年度 世田谷市民大学 連続講義


「現代アジア都市の肖像」

第8回 藤田先生 6月17日 8/10
ユビキタス・アジア 「環境化」する情報技術と都市
シンガポールは電子図書館構想「Library2000」により、2005年にオープンした国立図書館新館に未来の電子図書館システムを導入し、これも世界中から関係者が視察に来るほど、デジタル・ライブラリー化が進んでいます。

また、韓国でも今年5月、ソウル市瑞草区の国立図書館横に国立デジタル図書館(略称NDL)「dibrary」が完成しスタートしました。これは、まさに「ユビキタス図書館」と呼ぶにふさわしい未来の図書館のプロトタイプと言ってもいいのではないか、と思います。ここの全閲覧室には「本」がなく、閲覧用のモニターが並ぶ。「インフォメーション・コモンズ」と呼ばれるこのDBでは、収蔵する国内で出版された全ての学術書籍、各種DB、学位論文等の原文データベースを作成・提供、閲覧・印刷可能となっている(一部有料)。また、多言語、バリアフリーにも対応。館内のみならず、ネットからのアクセス利用も十分可能になっているようだ。まだ、実際私自身が利用したわけではないので、その全貌はよく見えないのですが、韓国における学術情報資源の最大ポータルとなるのは間違いないと思います。どこかで試験導入されたシステムの状況・結果を待つのではなく、まず社会実験を通じて完成形を模索していく。このようなスタイルにも、それぞれの国のテクノロジーと社会に対する姿勢が見え隠れしますね。
日本では、著作権法改正に伴い、国立国会図書館がようやく蔵書を過去のものから急速にデジタルデータ化するというプロジェクトを進めています。蔵書DBのネット検索・閲覧を有料でスタートする事業計画ですが、アメリカの百分の一、シンガポールの十分の一といわれている日本の国会図書館の予算では、ほとんど現在の世界の先進的ケースにはついていけません。
確かにこれらのプロジェクトには、各国の著作権制度との困難な調整事項が大きく関係しています。ここでも技術と法がぶつかる。それゆえ、Googleがアメリカの大学と組んで進めている「書籍電子化プロジェクト」も、アメリカの出版業界と色々な訴訟をおこしたわけです。現状では、Googleはあなたたち出版業界、著者にもリターンがあるということで、ビジネス提案として和解をしたわけです。そして、Googleはこのやり方で全世界の本に対してこの手法を踏襲しようとする。現在、日本の出版業界が戦々恐々としているのは、まさにこの破壊的(かつ創造的?)技術が、出版業界というものに及ぼす、また図書館というものに及ぼす「影響」の先を、どう読んでいいかわからない、ということででしょう。しかし、既にアメリカとユネスコは「世界デジタル図書館計画」に合意しているし、EUは域内の「デジタル図書館WEB」を構築し始めている。ともあれ、図書館の本という「情報」がいよいよ「ユビキタス化」される時代に突入した、と言えるでしょう。

■東京 日本初の「ミューチップ」図書館
最後に、日本の地域的な事例ですが、東京の北区に新しくできた新中央図書館、最新の無線ICタグ「ミューチップ」を導入した図書館をご紹介します。北区は地域各所に小さな図書館がたくさんある、物理的な図書館ネットワークを作っていました。しかし、中心となる中央図書館が老朽化していて、今回最新の図書館情報総合システムを導入する形で、情報的にも最新のネットワーク型図書館として再生しました。これは、地域における図書館の持つ機能を抜本的に変えようということで、設計されています。