2009年度 世田谷市民大学 連続講義


「現代アジア都市の肖像」

第8回 藤田先生 6月17日 9/10
ユビキタス・アジア 「環境化」する情報技術と都市
おそらく、設計上シンガポールの事例も視察したと思いますが、極小の無線ICタグを使い、蔵書管理業務の圧倒的効率化を図っています。
またここは、視覚障害者のための音声読書ソフトを使ったサポート室、研究のための個室レンタル、ボランティアのためのサポートスペース等も配置され、地域コミュニティ機能も周到に設計されている。このように、未来に向けた情報図書館の設計は、従来の「本の貸し出し施設」「生涯学習」という機能を超えた地域の知的情報文化センター、コミュニティ支援センターとして空間的にも、情報的にも大きな役割を担いつつあります。
また、本というのは本来、ISBNという世界共通の番号で統一されていますから、それをベースにデータ構築をやっていくことで、より広域的なDBの統合ネットワーク化が、比較的容易です。国内外の状況をも視野に含んだ、公共的な中長期的ビジョンを持ったシステム構築を、していって欲しいものです。

■「世界都市」の「世界的共通性」
今まで様々な情報化の状況、事例を見てきましたが、どうやら現代アジア都市の中に急速にある種の共通な情報技術基盤が生まれてきているようです。まず交通や金融情報システム、それからメディア、行政、教育や文化の情報システムの中に、ある共通の情報環境が組み込まれつつある。スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ファーストフードというグローバル・フランチャイズ・システムが、アジアの大都市でもいよいよ共通化してきていますが、これもまさに「ユビキタス」的なITの緻密なバックヤードがなければ、まったく成立しないビジネスです。

 

そうなると、それを真っ先に享受し活用するアジアの新中間層、中心はどこも若者を中心とした都市型ホワイトカラー層ですが、彼らのライフスタイル、中でも情報文化スタイルとでもよぶべきものが、非常に近づきつつある。同じようなマンションに入り、同じような通勤スタイルをとり、同じような食・消費・余暇、情報収集のスタイルをし始める。もちろん、これはあくまでまだまだ表層的、一時的な現象で、文化的基盤の違いによる様々なバリエーション、多様性が生じてはいます。しかし、ある共通の情報文化の摂取のスタイルを享受することによるライフスタイルの共通化は、何らかの共通した心性を生み出ししつつあるのではないか、と私は思っています。