2010年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジアの家族」

第9回 福田先生 6月16日 2/7
中国の家族 改革開放がもたらした家族の変容
人民公社と「単位制」
まず、改革開放による変化の前、つまり建国初期の時代の単位制について詳しくご説明したいと思います。単位制は、中国共産党が国民を政治的に動員するための手段の一つでした。中国共産党が家族に対してさまざまな介入や政治的方針の決定を行う際のユニットとして設置されました。あらゆる企業、それから機関、官公庁、学校、軍などで、働いているそれぞれの人が所属する組織、それから党の支部というものが、そこで働いている人とその家族を管理しました。単位はただ単に政治的な機能、つまり所属している人を管理して、その人たちに政治的な指示を伝えるという機能を果たすには止まりませんでした。それだけでは人を縛り付けておくことができませんので、経済的な機能―給与の支払いや住宅の配分、社会的な機能―医療、年金などの社会保障や冠婚葬祭な機能も、単位が果たしたわけです。
中国共産党がそれぞれの企業、工場、学校、病院などに置くものが単位です。単位の中はどのようになっているかというと、本社、それから大きい会社、機関などですと、それぞれの部門ごとに単位が分かれていました。配布資料には、単位が管理していた事柄が書いてありますが、1つ目に、「所属者の結婚・転職・転居・旅行などに必要な身上証明書を発行することを通じて、それぞれの人の行動を統制・管理する」とあります。こういったものはすべて檔案(とうあん)と呼ばれる文書に書きこまれ、代々管理されていました。それから、2つ目は経済的な部分で、「勤務評定を通じて給与や各種の手当を支給する、住宅の配分を行う」とあります。住宅は決まった区域に同じ単位の人が住むように配分されるので、近所づきあいが非常に重要でした。3つ目は社会的な役割です。医療・年金などの各種社会保障や一人っ子政策の執行、病院・学校・商店の経営、冠婚葬祭への援助などが挙げられます。このように、単位は所属者にとって職場であり、行政機関であり、生活共同体、すべての役割を担うものでした。
ここで、当時の家族の姿を描いた映画から、実際にどういう感じだったのかということをご覧いただきたいと思います。これからお見せするフィルムは「活きる」という映画です。張藝謀(チャン・イーモウ)という非常に有名な中国の映画監督がいます。彼が90年代の初めに撮った映画で、1940年代から70年代にいたるまでの中国のある家族の遍歴を描いたもので、当時はあまりにも赤裸々に描きすぎたので、中国では上映禁止になってしまった映画です。この映画は、今私がご説明した中国の家族が歩んできた歴史の特徴を、前面に出して描いています。主人公の家族は、封建社会では地主というか、お金持ちの家庭です。先祖代々の大きな屋敷に、一族で住んでいるような人だったのですが、そういった財産を建国直前にたまたま博打で失ってしまうのです。ですので、建国初期のこの家族は、すべての財産を失って、庶民としてスタートします。その後、中華人民共和国の政治史と共に、家族を取り巻く政治の環境は変わるけれども、庶民の知恵でなんとか生き残っていくというお話です。この映画から、旧家族の様子と大躍進期の家族の様子がわかる箇所をそれぞれお見せしたいと思います。