2010年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジアの家族」

第9回 福田先生 6月16日 4/7
中国の家族 改革開放がもたらした家族の変容
このような問題について、中国の社会全体を見渡すと、鍵を握っているのは、改革開放で先に豊かになった人たちです。改革開放は、そもそもすべての人を一挙に豊かにしようとした政策ではなかったわけです。鄧小平の「先富論」は、先に豊かになるものが豊かになって、それ以外の層をけん引していくと言いました。でしが、中国社会の現状は、「新中間層」の人たちはかなり出てきたけれども、この人たちの富が貧しい層に還元されているのかというと、なかなか上手くいっていない状態です。
例えば、私はよく自分の大学の授業で話しますが、中国からの留学生の多くはこの「新中間層」です。こういった層でなければ、子供を海外に留学させることはできません。正直に言って、この子たちの大半は私が教えているような政治や社会問題に対する関心が低いです。大学ではビジネスを勉強して起業したい、お父さんの中小企業を継いでお金を儲けたい、というような学生が多いです。この新中間層の人たちは自分たちがもっと豊かになるということに一生懸命で、富を配分するとか社会全体が豊かになるということに目を向けられる人は、現状においては少ないのです。
しかし、社会的な弱者の問題をどう解決していくかということを考えた場合には、やはりこの「新中間層」と呼ばれる人たちがいわゆる「市民社会」を作っていって、弱者を救えるような仕組み、ボランティアワークというものをやっていけるのかどうか、ボランティアではないとしても、税制など富を再配分する政策を受け入れていけるのかどうかということが、今、中国の政治・社会において大きく問われているところだと思います。

都市家族の4:2:1構造
それでは、政治・社会的な環境の変化が、中国の家族へ実際にはどのような影響を与えているのかを、具体的に見ていきましょう。最近の中国の家族というのはよく「4:2:1構造」といわれます。これは何を意味しているかというと、おじいちゃんとおばあちゃんというのがそれぞれにいて、夫婦、そして子供は一人っ子、と言った構造です。4:2:1構造というのは単なる家族構成の比率ですが、この背後には現代都市家族の問題点が沢山あります。例えば、伝統的な家族の規範が薄くなってきていて、この夫婦が4人のおじいちゃんおばあちゃんを面倒見るかどうか。また、最近よくいわれるのが、この夫婦世代にはまだ兄弟がいます。しかし、この子供の世代になると、一人っ子政策のために兄弟がいません。この世代が社会を担うようになると非常に困るだろうといわれます。
これは一義的には人口比率の問題でしょうが、それに加え、頻繁に指摘されるのは、この世代の価値観の問題です。この一人っ子世代は、よく「小皇帝」と呼ばれます。この「小皇帝」世代は両親にとってたった一人の子供というだけではなく、それぞれのおじいちゃんおばあちゃんにとってもたった一人の孫です。この6人が、自分たちの持っているお金、時間、愛情、すべてをこの一人の子供に注ぐので、この世代は我儘に育てられているといいます。打たれ弱い、我慢が出来ない、自分勝手など、人間としての未熟さを指摘する専門家も多いようです。この「小皇帝」たちにここまで愛情を注いでも、この子たちが本当に自分の親やおじいちゃんおばあちゃんの面倒を見るのかということが、中国では深刻な問題として認識されるようになってきています。