2010年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジアの家族」

第9回 福田先生 6月16日 7/7
中国の家族 改革開放がもたらした家族の変容
高齢者への対応は、先ほどもお話ししましたように、中国社会全体で見てもかなり大きな深刻な問題だと認識されるようになっています。中国では「養老問題」といいます。現状では、次の3つの対応が一般的です。1つ目は家族で介護する在宅ケアです。これは日本でもそうですが、もちろんこの在宅ケアができれば最もいいということになると思います。しかし、子供が遠くに住んでいたり、子供は自分の子供の世話と仕事で手いっぱいだったり、様々な事情があって難しいといわれています。2つ目は、専門の施設―養老院とか敬老院といいますが―に預ける、老人ホームみたいなところに入ってもらうという方法です。ただし、中国においてはまだ施設数が少ないことと、中国の伝統的な家族観から見て、人々はこれにはかなりの抵抗があるそうです。自分の親を施設に預けるのには抵抗があるが、在宅ケアは生活上の事情から難しいということで、3つ目の「居家養老」が出てきました。基本的には自宅で老人が生活をして、時々子供も老人の自宅に様子を見に来て、それプラス社区からさまざまなサービスを受けるという方法が注目されています。
北京市の場合を見ると、市内に2,200余りある居民委員会が老人福祉の施設を持っています。各社区に老人福祉の施設があって、そこには単なるケアをするだけではなくて、コミュニケーションをとったり、老人が社会貢献をする場所なども確保していて、現地の社区の中の学校などと提携して、ボランティアで地域のお年寄りをケアしてもらったり、いっしょにさまざまな文化活動をしたり、余暇を楽しんだりしようというような動きが出ています。これはかなり現実にもあっていますし、こういったものが各地で広がれば良いと、中国政府も考えているようです。
このように「社区」は、社会福祉の部分をもう少し手厚くするための、新しい地域社会のあり方として最近中国の都市において注目されています。

ここで、ちょっともう時間も少なくなってきましたが、もう1本、「胡同の理髪師」という映画の一場面をお見せしたいと思います。これは北京オリンピック直前の北京で撮られたドキュメンタリー風映画です。北京の市街地で暮らす老人の生活を追ったものです。この中で改革開放世代の人々と、老人たちのギャップが描かれている個所がいくつかありますので、最後にこれをご紹介したいと思います。

<映画開始>

このチンおじいさんは、散髪師なのですが、友人の一人が息子夫婦の自宅へ引き取られた後の話です。都市のマンションに連れて行かれた老人は、どうしてもこのチンおじいさんにひげをそってほしいといって、息子が―改革開放の象徴みたいな格好をしていますね―、このチンおじいさんを迎えに来るわけですが...。

<映画終了>

この場面は現在の中国社会を象徴しているかと思います。特に、この息子は親のことは大事にしたいけれども、怖い奥さんもいますし、自分たちはきれいなマンションに住みたい。仕事もあるから、寝たきり状態になるまで面倒を見ることができなかった。寝たきり状態になって引き取ったけれども、なかなか上手くいかないという状態ですね。日本でもこのような介護問題はあるかと思いますが、中国においても都市部ではこのような問題が深刻化しているといえます。