2010年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジアの家族」

第1回 梶原先生 4月14日 2/10
家族のアジア
こうした、家族についてそれが機能的にどういう意味を持っているかということ、その拡がりに対応して当然、家族に関する学問的な研究分野もさまざまであります。医学とか、生物学は当然ですし、生産に関して家族を経済的に分析する、すなわち、家族的労働、家族的生産、それから歴史的には家内工業などの研究が行われてきました。ですから、経済学は家族に無関係どころか、逆にきわめて深い関係をもっております。
それから、いわゆる、英語でホームエコノミックスといいますが、日本語でいう家政学という分野があります。家事全般にもかかわりますが、そもそもは家族という一つの単位をどう運営していくかという分野です。この分野も、家族と深く関わる分野であります。
いうまでもなく、家族法、民法その他、法律学も家族にとっては非常に重要な分野です。法律学のかなりの部分は家族研究であります。私は人類学研究をしておりましたが、人類学の元祖、いくつかの源は、イギリスでいうと、ヘンリー・メインとか、ウェスターマークとか、そもそも法学研究をしておりました。人類の法的研究をしているうちに、家族には意外とバラエティがあることが明らかになり、当時のヨーロッパ社会で考えられた家族とは違う家族が地球上に存在していることに着目したわけです。当時は「未開社会」といっておりましたが、「未開社会」の家族のあり方とか、家族に関する取り決め、規則、法律などを探求していくと、ヨーロッパ社会の、極端にいうと反対、逆さまになったような家族や社会があるということになり、それが近代人類学の誕生に大きく寄与したということがございます。
また、家族、王朝の政治学ということを研究している政治学者もたくさんおります。日本の中でも、先ほどの世襲もそうですし、政治家の一族とか、政治家の家系というものを研究している方もいらっしゃいます。著名な政治学者であるジェラルド・カーティスさんは、彼は家系の研究ではありませんが、大分県のひとりの政治家が家族も含めて、どういう形で政治活動、選挙活動をやったかという研究を博士論文に仕上げ、コロンビア大学の教授となりました。
家族社会学という分野が社会学の中にありますし、もっとひろく社会学全般についての識者ですが、家族について大変いい本をお書きになった、「おひとりさま」の上野千鶴子先生、尊敬する方ですが、そういう方もいらっしゃいます。

こうしてみると、家族は、社会科学、人文科学にとっては非常に大きな研究対象となってきました。家族について研究する分野とは、あらゆる分野を網羅してしまうといって過言ではありません。学問分野だけではなくて、ご存じのように、例えば文芸作品、小説のかなりの部分は家族について何らかの言及をしておりますし、家族が題名の一部になった小説をちょっと考えても、すぐ10本ぐらいは思い浮かべられるのではないでしょうか。当然、映画もそうです。家族を描いた映画、これは古い映画から、しばらく前の『家族ゲーム』や、『家族の肖像』があり、最近でも日本だけではなくてヨーロッパやアジアの他の地域で、家族というのはこうした文芸作品のテーマとして絶えることなく登場します。絵画の題材になることも少なからずありますし、音楽でも家族の時間を表現した音楽が作られております。オペラもそうですね。『ロメオとジュリエット』のように、二つの家族の対立や葛藤を主題にするオペラはたくさんございます。
さて、これまで家族の機能や、それと対応する家族研究の拡がりについてお話してきました。これからはもうすこし直接に、家族にみられる「関係性」について述べてゆきたいと思います。「親子関係」、「夫婦関係」「兄弟姉妹」、「オジとオイ」など、さまざま関係がひろい意味の「家族」のなかにみられます。