2010年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジアの家族」

第5回 松岡先生 5月19日 1/9
インドの家族1 大家族制から核家族へ

<レジュメ>
①インドについて
 インド:正式名称「インド共和国」「バーラト」(ヒンディー語の名称)
 面積:3,287,590平方キロメートル(日本の9倍弱)
 人口:11億9800万3000人(2008年/日本の9倍強、中国に次いで世界第2位)
 多様な民族の多様な言語
  1.インド・アーリア系言語~ヒンディー語、ベンガル語など北インドの言葉
  2.ドラヴィダ系言語~南インドで話される言語で、タミル語、テルグ語、カンナダ 語、
    マラヤーラム語など
  3.チベット・ビルマ系言語~ヒマーラヤ山脈周辺に住む人々が話すチベット語や、
    東端インドの諸州で話されるマニプリー語など
  4.オーストロ・アジア系言語~ごく初期にインド亜大陸に移動してきた人々は、
    現在では各地に飛び地のような形で居住しているが、彼らの話す言語、例えば、
    東部インドのサンターリー語、ムンダ語など 
 多様な宗教:宗教別人口比(2001年国勢調査)
  1.ヒンドゥー教徒  80.5%
  2.イスラーム教徒  13.4%
  3.キリスト教徒    2.3%
  4.シク教徒      1.9%
  5.仏教徒       0.8%
  6.ジャイナ教徒    0.4%
  7.その他の宗教信者  0.7%(宗教への言及なしも含む)

②インドの家族の様々な形態
 ・大家族/核家族
 ・父系制/母系制
 ・単婚(一夫一妻婚)/多夫婚・多妻婚

③家族の形成~結婚と出産
 ・結婚~見合い婚(arranged marriage)が多い=カースト等前提条件をクリア
  1.仲介人(親族、または床屋などの仲介を生業とする者)が口利きをする
  2.新聞の求婚広告で相手を捜す
  3.ネットの結婚斡旋サイトを利用して相手を捜す
    ↓ 
   本人同士のクンダリー(誕生時の星回り)が合うかどうか等を調べる
    ↓
   お見合いの場を設定。たいていは花婿候補が両親と共に花嫁候補の家を訪ねる形に。
   遠距離の場合、星回りが合えば相手の写真だけを本人に送ってすぐに次へ進むことも。
    ↓ 
   婚約式
    ↓
   結婚式(北インドのヒンドゥー教徒の一般的な結婚式の場合)
   <事前の行事>メーヘンディー=ヘンナ染め(花嫁)、お別れの宴(花嫁側)、
    ターメリック(ウコン)を塗る儀式など
   <当日の行事>バーラート(花婿が行列を仕立てて花嫁の家に行き、そこで挙式)
    婚姻の儀式(祭壇を作り、僧侶が中央で火を焚く→花嫁花婿が花輪を相手の首に
     →花嫁花婿が座り、僧侶の指示する経文を唱えたり、火に物を注いだりする
     →花嫁花婿が衣服の端を結び火の回りを7回(又は7歩)まわる)
     →披露宴後婚家へ
    結婚の証しのアクセサリーなど
     花嫁~マンガルスートラ(北インド)、ターリ(南インド)、シャンク(ホラ貝)の
     腕輪(ベンガル地方)、シンドゥール(髪の分け目につける吉祥の赤い粉)
 ・出産 多産傾向が強かった~乳幼児死亡率が高い、子供も労働力となる
  男児を望む傾向が強い(特に北インド)
   男児~家の跡継ぎで、親が死んだ時遺体を焼く薪に火を付ける役目を担う
   女児~結婚の時持参財(持参金や花婿への贈り物)が必要
  家族計画概念の浸透~1970年代の標語
   "Ham Do Hamare Do(ハム・ドー・ハマーレー・ドー)"(私たち2人、私たちの(子)も2人)
   "Chhota Pariwar Sukhi Pariwar(チョーター・パリワール・スキー・パリワール)" (小さな家族は幸福な家族)
  
  ④大家族制(joint family)~拡大家族とも。一つの家に血縁関係のある複数家族が住む
 

 <大家族の例>


⑤なぜ大家族制が採られたか
 ・労働力の確保
  ・相互扶助
 ・財産分与を避ける
 ・住宅事情(特に都市部)
    
⑥核家族へ
 ・農村部より都市部への移動、定住
 ・生活水準の上昇
 ・移動手段の発達
 ・煩わしさからの解放

⑦家族を核として広がる世界
 ・コミュニティ(カースト、宗教、地域)
 ・故郷
 ・母国

[参考文献]
 K.M.カパディア/山折哲雄訳『インドの婚姻と家族』未来社、1969.
 川島耕司「ケーララのナーヤルと母系制」重松伸司、
 三田昌彦編著『インドを知るための 50章』明石書店、2003.
 押川文子「再解釈される「家族」の規範と機能」広瀬崇子、近藤正規、井上恭子、南埜猛編 著
 『現代インドを知るための60章』明石書店、2007. 
 山下博司・岡光信子『インドを知る事典』東京堂出版、2003.