2010年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジアの家族」

第5回 松岡先生 5月19日 3/9
インドの家族1 大家族制から核家族へ
それから、今ではほとんど全部が単婚、つまり一夫一妻制、夫と妻が1人ずつという婚姻関係がほとんどなんですが、ほかに多夫婚、つまり1人の妻に対して夫が何人もいるという婚姻形態をとるところもあります。これは南インドにトダ族という部族がいるんですが、そこでは1人の妻が何人かの夫を持つというか、兄弟がいると兄弟全員で1人の妻を共有する、そういう形がとられています。その場合、子どもができると誰をお父さんにするかというのは弓矢を使って選ぶらしいんですけれども、この人がと決まるとその人がお父さんになる。そして、家族、兄弟全員でその子の成育に対して責任を持つということになるようです。そういう婚姻関係もあります。
それから、多妻婚、1人の夫に対して何人かの奥さんがいる場合もあります。これはイスラーム教徒も4人まで妻を持つことが認められています。ただ、イスラーム教徒の場合、日本の男性が何人も違う女性と関係を持つというようなのとは違って、もともとアラビア半島で戦争が多かった時に、戦争未亡人ができてしまって、その人たちが暮らしていけない。それに対して、裕福な人がその人を妻として迎えることによって生活を支えてやる。そういうところから始まったもので、複数の妻を持ってもいいけれども、平等に愛する、平等に経済的な支援をする、それがないといけないと言われています。こんなふうにいろんな形態があるんですね。
それで、家族というのはどこの世界でもそうなんですが、家族を増やし、継承していくのは、婚姻とそれに伴う出産によって支えられていきます。ですので、ここでインドの結婚についてちょっと見ていきたいと思います。
インドの場合は、親が相手を探して結婚させるのが一般的です。お見合い婚といったらいいのか、あるいはアレンジ婚といったらいいのか、それが今でもほとんどなんですね。少し前の調査で、都市部の結婚で恋愛結婚は1割だけというような数字が出ています。9割の人は、親が決めた相手とお見合いをして結婚するわけです。
なぜそうなのかというと、カーストなどの前提条件を、親が選んでくれるならクリアできるというところがあるんですね。カーストという概念がインドにはあるわけですが、バラモン(司祭)、クシャトリア(王侯・武士)、ヴァイシャ(庶民)、シュードラ(隷属民)は、インドではカーストの大枠という概念なんです。これはインドでは「ヴァルナ(色)」と呼ばれます。
ヴァルナに対し、それぞれのヴァルナに属するいろんなジャーティ、これは職能集団と訳したりしますが、こちらの方をインドの人たちは具体的なカーストと考えています。例えば、ヴァイシャの中には商人カーストもいれば農民カーストもいる。シュードラの中には、クムハール(壺つくり)やナーイー(床屋)がいたりする。大工さんとか、花つくりとか、いろんな職業のそれぞれがカーストで、各ヴァルナに属する、というふうに捉えられているんです。
それから「アウトカースト」と呼ばれる人々がいますが、今は「指定カースト」と呼ばれています。変な呼び方なんですけど、これまでいろんな呼び名が試行錯誤されて、結局公式的には「指定カースト」という呼び方になりました。彼らはカーストの4つのヴァルナの外に位置するというふうに考えられていて、いろんな差別を受けているので、その差別から解放されなくてはいけない、あなたたちは解放がまだ進んでいない人たちですよという指定を受けるカースト、ということなんです。この呼び名を嫌い、「ダリト(抑圧される者)」という呼び名を使う人もいます。
この指定カーストの中には、例えばドービー(洗濯カースト)とか、掃除人のカーストとか、それから、動物を殺したり皮をはいだりするカーストなど、そういう人たちが入れられています。こういうジャーティが、インドの人たちの概念ではカーストと考えられているんです。