2010年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジアの家族」

第5回 松岡先生 5月19日 6/9
インドの家族1 大家族制から核家族へ
結婚式というのは、インドでは一大イベントなんですね。特に農村部などでは、娯楽が少なかった昔はお祭りと並んで、親族の結婚式は非常に楽しい、心沸き立つ行事だったのです。大体1週間ぐらいいろんな儀式が続いたりするんですが、中でも重要なのは、花嫁さんの手にヘンナ染めをする儀式です。ヘンナというのは植物で、今、ヘアダイでヘンナを使っていらっしゃる方がいるかもしれませんけれども、タンパク質を染める作用があるんです。ヘンナの粉を溶いて、ちょうどホイップクリームを入れる袋の先がもっと小さいのに入れて、手や足にきれいな模様を描いていくんです。描くのはそれを職業にしている人もいますし、親族の中で上手な女性がやったりすることもあります。固く溶いたヘンナで模様を描いていって、何時間か置いておくんです。その後洗い流すと、ヘンナの染色で手に模様が、きれいな赤レンガ色で残ります。それが一つの花嫁化粧と考えられています。
このヘンナ染めをする日とか、花嫁側のお別れの宴、おまえはもうお嫁に行ってしまうのねということで、親族の女の人がみんな集まって花嫁に別れの歌を歌う日もあります。女同士の集まりという気兼ねのなさから、時にはそこで花嫁に性教育をすることもあります。結婚してベッドに入ったらこうするのよみたいな、そんな場ともなります。
それから、ターメリック、和名はウコンですが、ターメリックは浄化作用があるというふうに考えられているので、ターメリックを溶いた水を花嫁の体に塗っていく儀式もあります。時には花婿にやったりもしますが、結婚前のエステみたいなものですね。そういういろんな儀式をやって、花嫁との別れを惜しみます。
結婚式の当日は、まず、バーラート(花婿行列)といって、花婿が行列を仕立てて花嫁の家まで行きます。挙式は花嫁の家で執り行い、その後花嫁を花婿の家に連れ帰るわけですが、この時伝統的な花婿は白馬に乗って行きます。まさに白馬の王子様です。この花婿行列には楽隊が雇われるほか、夜の結婚式では提灯持ちじゃないんですけれども、灯持ちというか、大勢が電飾を持って付き従います。ですので、きらびやかで賑やかな花婿行列が花嫁の家に訪れるわけです。
花嫁の家では、地面より少し高い壇を設置し、その真ん中に火を燃やす祭壇を作ります。祭壇の前に僧侶が陣取って、そこに火を燃やしていろんなものをくべながら花嫁、花婿を結びつけていくんです。まず、ガーランド、花輪をお互いの首に掛け合う。それから、僧侶に言われたとおり、火に香木とかいろんなものを注ぎながら経文を唱えていく。
その時の花嫁、花婿の衣裳ですが、花嫁は北インドでは普通赤いサリーを着ます。南インドでは白いサリーを着るところもあったりと、これも千差万別です。花婿は、北インドの結婚式ではターバンをかぶります。また、両家の男性親族はピンクのターバンをかぶることが多いです。花婿は首にショールを下げており、その端と花嫁のサリーの端とを結びつけて、その形で2人が火の周りを7回回ります。あるいは2人で7歩歩く。それによって2人の婚姻が成立したことになります。この時親族や参列者は、お米とか花びらとかを投げて二人を祝福します。