2010年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジアの家族」

第6回 松岡先生 5月26日 8/9
インドの家族2 映画『家族の四季』から読み解く理想の家族
●この行事の時、ヤシュことローハンがクリシュに例の励ましの言葉を教えたとわかり、ラーフルは彼が弟だと気づきます。こうして兄弟の名乗りをし、「家に帰ってきて、兄さん」というローハンに対し、ラーフルの態度はかたくなでした。ローハンとプージャーは一計を案じ、ラーイチャンド夫妻をロンドンに呼び寄せて、偶然を装ってラーフル一家と会わせます。それでも、父ヤシュとラーフルの間のわだかまりは溶けませんでした。今の形は家族としては不完全だと強く感じていたアンジャリーは、ラーフルを説得しますが、ラーフルはやはり耳を傾けません。



アンジャリー
ここは祖国じゃない
家は持ったけど、これは本当の家じゃないわ
母の愛もないし、父の祝福もない
帰りましょう、ご両親の所へ、お二人のそばへ
お二人は私たちより年長者よ
怒ってはいても謝れば許して下さる
お二人もきっと、私たちと同じように寂しいはずよ
お詫びして戻りましょう

ラーフル
いいか、 君は知らない
他人を家に入れ、また追い出す
そのつらさを知らない
年長者だ、だけど傷つける権利はない
心を傷つける権利は



●そんな時、ヤシュの母の死がロンドンに伝えられ、ヤシュとナンディニー、そしてローハンは帰国して葬儀に臨みます。遺体を燃やす薪にヤシュとローハンが火を点けようとした時、ラーフルが姿を現して手を添えます。こうして、一族の男性子孫たちにより祖母の魂は無事昇天するのですが、いまだに和解しようとしない夫ヤシュに向かって、ナンディニーは初めて異議を唱えます。



母ナンディニー
憶えてる? お母様の言葉を
"夫は神だ、夫の言葉や考えはみな正しい"
ラーフルを連れてきた――正しい
かわいがった――正しい
家族の一員になった
私の生命になった――正しい
本当に正しい
それから
ある日出て行った――間違い
あなたが勘当した――間違い
息子を母親から引き離した――間違い
家族はバラバラになった――間違い
それでも夫は神なの?
神は間違いを犯さない
私の夫はただの夫、単なる夫だった
神ではない、神ではなかった
言った通りよ
以上よ



(それまで夫に従順であった妻が夫に反論する、しかも、夫が以前使った、対立意見を封じる物言いをそのまま真似て使う、というこのシーンは、インド人観客にとってはかなり衝撃的であったと思われます。女性の自立を考えさせる、印象に残るシーンです)