2010年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジアの家族」

第4回 宮脇先生 5月12日 10/11
モンゴルの家族2 遊牧生活から都市生活へ
最近の最大の問題は、IMF国際通貨基金が「モンゴルに援助をするからには、何か担保が必要だ」と言い出して、土地の私有化が始まったことです。国連の区分けではモンゴル遊牧民は農民に分類されるんです。つまり世界のジャンルの中に遊牧民というのがない。そうすると、こんなにたくさん土地があって人口が少ないんだから効率が悪いという。1924年にモンゴル人民共和国ができた当時の人口は100万人いません。自給自足は100万人が限度です。今は260万人を越えましたが、10代、20代の子どものパーセントが非常に多いです。
社会主義時代は、国が、どんなに遠い地域の羊でも全国同じ価格で買い上げました。ところが民主化後は、ガソリン代自己負担でしょ。そうしたら遠い所の遊牧民は不公平だから、故郷を捨てて中央に出てきちゃうわけです。道路沿いに自分のゲルを置いてレストランを開いたら現金収入があるから、みんな都市の近郊や道路沿いにくる。せっかくの社会主義時代の割り振りがご破算になって、みんなでどんどん首都の近くに集まってきた。こうして今、ウランバートルに100万人を越す人が住んでいます。
われわれ外国のモンゴル学者は「土地の私有化はやめておけ」と言ったんです。だけど結局、草原の遊牧地はこれまで通り国家のものだけれど、宅地の私有化が始まりました。公務員にコネがきく人は、まず、いい土地を自分の宅地にした。社会主義時代は、首都でも年金生活者がミルクを飲むのに牛を飼っていたんですよ。でも宅地所有で柵ができると、牛があちこち勝手に歩けなくなった。それから首都の外側にも草原とか遊牧地があったんですけど、そこもみんな宅地になっちゃう。首都の近郊で遊牧していた本来の遊牧民にしてみたら、よそ者がいっぱい来て勝手に草を食べるから、自分たちが昔から放牧していた草原の草が荒れたというので「柵を作る」と言い出して、大変なことになっています。もともと国有だったアパートも、今住んでいる人間の所有になりましたが、これから後の公務員はもらえないのは不公平だともめてます。

都市のマンホール・チルドレン
モンゴルは男も女も気が強いので、都会で夫婦げんかするとすぐに離婚するの。そうすると子どもはどうなる? 昔だったら、おばあちゃんや親戚が面倒を見たけど、みんな自分のことで精一杯です。草原だったらちょっと人が増えても「もう1個ゲル作ろうぜ」ですむけど、アパートに住める人間は限られてる。そうすると、子どもは「新しいお父さん嫌いだ」「新しいお母さん嫌いだ」といって家出するんです。子どもも自主性が強いから親に頭を下げないの。親とけんかして家を出た子どもは、マンホール・チルドレンになります。極寒の冬、工場からのお湯が流れる地下だけが温かいので、子ども同士でグループになってマンホール生活をして、かっぱらいをする。
モンゴル国が何もしない間に日本人がたくさん援助に入って、孤児院を建てたり、保育園を作ったりしていますが、何十人かしか救えないじゃないですか。本来は国家がやらなきゃいけないのに、モンゴル国にそういう仕組みがない。社会主義時代には教育はすべて無償だったけれども、今は食費を取るようになったんです。食費がもったいないから学校にやらない親が出てきた。遊牧生活って現金がないんですよ。