2010年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジアの家族」

第4回 宮脇先生 5月12日 4/11
モンゴルの家族2 遊牧生活から都市生活へ
遊牧民の家族
さて家族のお話に移ります。ゲルの前に大家族が集合していますが、こんなことは夏しかない。夏だけは草がいっぱいあって雨が降るので、久しぶりに親戚が一同に集まるとか、おばあちゃんと孫全部が集合するということがあるんですが、普段は2つか3つのテントが一緒に遊牧しています。これが1家族ですかね。
モンゴルの家畜は、前回も言いましたように羊と山羊と馬と牛とらくだの五畜ですが、北のほうには牛が多くて、南のゴビ砂漠はらくだが多い。モンゴルは、首都のウランバートルより北方には雨が降りますが、南半分は砂漠です。シベリアから湿気が来るので、雨は山の北側に降る。モンゴルの山は、北側に木が生えて南ははげています。モンゴルで農業ができるのは、北方の川沿いの一帯で、夏は30度になるので、小麦が取れる場所があります。五畜全部持っている家族は少ないけれども、基本4つは絶対に持っている。
羊は貴重な食糧で、テントを作るフェルトは羊毛です。でも羊だけでは放牧できないので山羊が必要ですし、カシミヤが取れる山羊の割合が今どんどん増えています。牛はミルクも大事だし、移動のとき重いものを引いてくれる。馬は昔は本当に大切でした。戦争はもちろんですが、遠いところに行くときも、一人につき3~4頭連れて行った。それから馬のお乳は甘いので、いいお酒になるんです。
モンゴルの食事は、夏は乳製品中心の白い食事です。ミルクが取れるときにはミルクばっかり飲みます。前回言ったアルコール分が2~3%のアイラグという馬乳酒は子どもにも飲ませる。これはおなかをきれいにする。疲れた体に夏はビタミンをどっさり取る。その代わり秋から冬はミルクがないので、乾燥チーズの他は、肉中心の赤い食事です。草がなくなる前の秋に、冬を越せそうもない家畜を一気に殺すんです。肉は凍らせるか、乾燥させる。その肉を冬中食べます。自給自足が原則ですので、社会主義時代は得意な家畜を分担して放牧することはありましたが、1種類しか持たない生活はありませんでした。
モンゴル人は一族という意識はあるけれど、互いに住む場所は非常に離れています。なぜなら、草のまばらな草原で集まって住むとすぐに草場が荒れるから。特に草原に草が少ない春と、厳しい冬を乗り切るために家畜になるべくたくさんの草を食べさせたい秋には、遊牧民はうんと離れたところに広がって放牧します。なんたって日本の4倍の国土に260万人ですからね。大体2~3個のゲルが一つの単位で、夫婦と子どもで1つのゲル、全部合わせて10人くらいが1つの家族、これをアイルと言うんですね。もちろん、そのときそのときで違うんです。「今回一緒にやるか」「じゃあ、お前と一緒にやろう」みたいにして、子どもとずっと一緒にいる人たちいるし、季節ごとに組み合わせが変わる友達同士というのもあるわけです。血縁があろうがなかろうが、一緒に暮らす家族をアイルといいます。