2010年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジアの家族」

第4回 宮脇先生 5月12日 7/11
モンゴルの家族2 遊牧生活から都市生活へ
だから伝統的に遊牧生活は、男はマッチョに見えるけれど、じつは女もとても強い。男のいない間、女が日本で言うなら家長の役割をして、労働としては乳搾り、チーズ作り、それから毛皮を縫うとか、なめして革を作るとか、そういう家まわりの労働は全部女がする。水をくむのも女の仕事で、これを子どもが手伝う。男の子は10歳過ぎたらお父さんと一緒に遊牧の見習いに出る。こういう役割分担がはっきり分かれています。けれども、男女に上下関係はない。モンゴルは今でも女のほうが地位が低いという意識がないんです。アジアの男尊女卑というのは、儒教的な中国の文明です。中国の隣にいるモンゴルは、じつは中国文明の影響を受けていないと私は思います。
モンゴルでは、親はまず女の子に高等教育を受けさせる。モンゴルで働いている日本人の女友達に聞きましたが、小さな男の子が悲しそうな顔で「ぼくの家にはお金がないから、姉さんは高校へ行けるけど、ぼくは行けないんだ」と言うんですって。親は「男は肉体労働をしても食っていけるが、女の子がもし手に何にも職がなくてお金がないと体を売るしかない。だから女の子にまず教育を」と言うんです。
韓国人がこれを聞いて激怒しました。モンゴルには今韓国人がたくさんいますが、韓国は本場の中国以上に儒教が盛んで男尊女卑の国でしょ。これに比べて日本人は双系制で、男系と女系を同等に考える意識が強かったと私は思うんですね。だって、大阪の船場なんて、優秀な番頭さんに家を継がせるほうがよっぽど成功するという慣習がある。男の子は自分が生まれた家の財産をすっても平気だけど、女の子は自分の家を大切にするので、関西ではぼんくら息子は勘当して、娘に家を継がせるのが非常に多いんですね。それから、跡取りがないと夫婦養子をしますでしょ。血縁は全然気にしないということですよね。父系の血にそんなに執着しない。韓国人はそれも信じられない。奥さん方の血筋を養子にするのは、何という野蛮だと言うんですね。儒教では、男系の子孫がお祀りしてくれないと、祖先に食べ物が届かないんです。娘が祀ったって駄目なんです。だから、遠いところの男系を連れてくるんです。それが朝鮮文化なのね。似ているようでものすごく違うの。
話を戻して、朝青龍のお母さんはモンゴル国立大学を出ているけど、お父さんはトラックの運転手です。モンゴル相撲では位の高い立派な力士で、人気のある人だけど、モンゴルにはプロの力士はいないんです。全員が何か別の職業を持っていて、夏だけ草原で相撲を取るわけです。白鳳もお母さんはモンゴル国立大学出のお医者さんですが、お父さんはオリンピックのレスリングで銀メダルを取った。多分大学は出ていないです。
朝青龍自身も、四国の高校を出て、モンゴルで同級生だったタミル夫人が、ドイツの大学に留学中だったのを呼び戻して日本で結婚したんです。つまりドイツ語ができる大学生だったのに、留学を途中でやめさせて結婚したのね。それでけんかして別居騒動のとき、タミル夫人は「ニューヨークにもう一度留学する」って言ってたらしい。どうです? 学歴は女の方が高いんです。それで私が思うのは、ということは、女は男に学歴を求めないということですよね。もし女が学歴の高い男でないと結婚したくないというのであれば、男は一所懸命に大学に行きますよ。つまり、判断力があって、自分を持っていて、家族を守ってくれる人が夫としていいわけです。学歴が高いだけの人には魅力がないわけですよ。おもしろい文化ですよね。