2010年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジアの家族」

第11回 土佐先生 6月30日 1/9
韓国の家族1 伝統と変化
おはようございます。国士舘大学の土佐と申します。今回でこちらでお話するのは3年目になります。毎回韓国の話をいろいろとさせていただいておりますけれども、今年は「家族」がテーマです。一番社会の基本的な単位でもありますし、一番身近な話題なんですが、実は話すのが一番難しいテーマでもあります。

情の厚い韓国の家族

まず、韓国の家族というと日本からみてどんな点に気づきやすいでしょうか。ここには韓国に行かれたことがある方もいらっしゃると思いますし、留学や観光という形で日本にたくさん韓国人がいらっしゃってますので、生身の韓国人に触れる機会も増えているはずです。あるいは韓国ドラマを通じた印象でもいいのですが、おそらく誰でも気づくひとつの特徴というのが、いわゆる情が厚いというか、濃いということではないかと思います。私自身もそうだと思います。ただし、別にそれで日本人の家族には情がないとか、そういうわけではないんですけれども。日本人の感覚からすると、ちょっとそこまでということがいろいろあります。基本的にはこれからお話するように、日本人の家族と韓国人の家族というのは、違うよりは共通点の方が多いのです。しかし、その日本人からみてもちょっと情が厚いというところがまず一つ気づく違いだと思います。 最近、日本人と韓国人が結婚するという例もどんどん増えております。女性が日本人で男性が韓国人である場合、むこうの家庭に入って、むこうの親戚とかと付き合いながら、文化的差異を肌身で感じることになります。ネットにはそういう経験談のブログがたくさん出てますから私も時々見るんですけれども、だいたい共通したような印象や意見がのっています。たまたまひとつの例としてご紹介しますが、韓国人男性と結婚してソウルで暮らす日本人女性が、あるインタビューでこう答えています。
「一般論で結構ですが、韓国と日本の家族のあり方、人間関係の違いがあれば教えていただけますか?」という問いに対して、「韓国では家族の絆が強いと思います。情があるといいますか、一度心を開いた相手には良くしてあげようという気持ちがありますね。逆にプライベートがないと嘆く場合もありますが。とにかく、家族の行事や集まりが多いのは間違いないと思います」。あるいは、「韓国に住んで5年目ということで、不適応などの問題ありましたか? 生活に慣れるまでに苦労したことはどんなことでしょう? 一番カルチャーショックを受けたことはどんなことですか?」という問いに対して、「韓国に来たばかりのころは、義母から毎日電話がかかってきたことでしょうか。当時は全く韓国語も話せず、電話で何を話せばいいのか分からなくて困りました。韓国ではアンブチョナと言って、嫁がしゅうとめに電話してご機嫌を伺うといいますか、「元気ですか?」と確認するんです。毎日電話する人もいるようです。日本ではそこまで濃い嫁、しゅうとめの付き合いというのはないですよね」と。 こうした声は、日本から嫁いだ方に大体共通した印象だと思います。アンブチョナというのは、漢字で「安否電話」と書きます。それだけでなく、機会があるとすぐに集まって、用事をしたり一緒に食事をしたりします。日本に親戚付き合いがないわけではないですけれども、例えば、結婚式とか葬式でしか会わないとか、それくらいの距離の付き合いが非常に多いと思うのですが、韓国の場合はそうはいきません。それに慣れていないと非常に面倒くさいのですが、それに慣れてくると、今度は逆に人情の細やかさというか人情の濃さというものを感じて、韓国の家族もいいものだなというふうになるわけです。そう感じるようになれば、韓国社会に適応していけるということになります。