2010年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジアの家族」

第11回 土佐先生 6月30日 2/9
韓国の家族1 伝統と変化
日韓の家族の比較
今日のお話は、今お話したような、そういう人間関係の濃さというか、情緒とか感情に属するような問題、そういうのが一方にあります。もう一方には、それと密接に結びついていますけれども、どんな規則とか構造に基づいて家族が営まれているかという問題があります。これは後でまた説明しますけれども、社会学とか人類学の用語で直系家族という言葉がありますけれども、そういうタイプが韓国の家族です。ただし、日本の家族も直系家族ですから、大きな枠で言いますと、日本の家族と韓国の家族は共通点のほうが多いということが確認できます。もう一つは、韓国というのは儒教の影響が非常に強いのですけれども、そういう儒教の考え方に基づいて日本にはない親族制度というのがあります。日本にも親戚とかがないわけではないですが、後でお話しするように、厳密な意味での親族というのは日本にはないのです。ここら辺が韓国とは違います。そういうものと絡みあって、独特の韓国の家族の情緒みたいなものを醸し出すわけです。  けれども、これがお話しするのが難しいのは、この構造の話ですとか、儒教の親族制度のお話だけを強調してお伝えすると、日本と韓国というのはこんなにも違うのだという感じの印象をおそらく受けられると思うのです。しかし、それは大きな枠で見たときは、実は非常に近いのです。その近さというのは、情緒のちょっとしたニュアンスとか、日本人だったらまあなんとなく分かるという、それくらいの近さです。そういう感情とか情緒の問題というのはなかなかお伝えするのが難しいです。ルールとか、歴史的な背景や構造の問題だけをお話しすると、全く違ったような印象を受けるかと思うのですけれども、実は両国の間には情緒的な部分で共通点を感じられる部分が大きいということを、まず最初におことわりしておきたいと思います。

家族と親族の定義
最初に家族と親族というものを定義しておきましょう。家族というのは当たり前の存在で、アジアのいろいろな地域でもちろんそれぞれの違いもあるけれど、家族というものはパッとこれが家族だと分かります。でも、実は突き詰めて考えると「家族とは何か」というのは、非常に不思議なものでして、なかなかうまく定義できない。一番簡単な定義というのは、「夫婦とその血縁関係にある者を中心として構成される集団」といったことです。これはよく考えると非常に分かったようで分からない定義でして、一つは血縁、血のつながりを中心に家族をとらえるという考え方です。ところがそれと異質な軸がもう一つあります。家族というのは大ざっぱに言うと、血縁家族プラス夫婦というわけですが、夫婦というのはもちろん血縁ではないですね。血がつながっていないから夫婦になれる。そういうのを婚姻家族と言いますよね。簡単に言いますと家族というのは血縁家族プラス婚姻家族ということですけれども、これは実は次元が全然違う話で、集団を構成するときに全く別次元の原理が作用しており、これがあたかも一つになっているところが家族の不思議なところですね。
血縁だけで組織されていたら、兄弟とかおじさんとかいった横のつながりが大切になります。いわゆる血縁家族ですけれども、婚姻家族というのはそれと全く異質の関係ですよね。それが一緒になるところが、実は家族の一番不思議なところというか神秘です。血縁の近さを示す「親等」という単位がありますね。自分の親との距離が1親等、その上の祖父母は2親等。こういうふうに数えていくものですけれども、ちなみに夫婦というのは何親等かご存じですか? あまり考えたことはないと思いますが、夫婦というのは0なんですよね。数えようがないというそういう関係ですね。夫婦というのは要するに他人ですが、他人が一緒になって作っていくのが家族。その中に血縁という、また別の軸があるという不思議なものでして、こういうものが家族です。