2010年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジアの家族」

第11回 土佐先生 6月30日 3/9
韓国の家族1 伝統と変化
親族の定義というのをやはり辞書で見ますと、血族と姻族、つまり、血縁家族と姻戚(いんせき)家族から成ると定義されています。あるいは、家族を超えた一族の総称という意味でも使います。日本の場合は民法で親族の範囲が定義されています。それによれば6親等までが親族です。6親等というのがどれぐらいかというと、イトコは4親等ですね。6親等というのは、かなり遠縁の関係になります。いわゆるマタイトコというやつで、民法上ここまで含めて親族です。でも、おそらくここにいらっしゃる皆さんも、そこまでのお付き合いがある人というのはほとんどないのではないでしょうか。ここは、失礼ながらかなりご年配の方が多いようですけれども、マタイトコとお付き合いがある方という方は、ちなみにちょっと手を上げていただけます?ああ、少しはいらっしゃるようで、すばらしいですね。大学などで若い学生にこういうことを聞いても、まず一人も手が上がりません。そのぐらい、日本人にとっての6親等というのは非常に遠い関係です。ひいおじいさんの名前も、もちろん日本人の場合はほとんど挙げられません。そういうのが、日本人にとっての親族の限界です。あと、姻族の場合は3親等、おじさんくらいまでしか含まれないというのが日本人にとっての親族の範囲、限界というものです。 韓国人にとっての親族というのはこんなもんじゃありません。
日本人にとっての家族のイメージを探るのに、「サザエさん」というアニメを例に挙げましょう。このアニメは、今や日本人の伝統的な家族を代表しているような位置にありますが、よく考えてみたら非常に不思議な家族ですよね。主人公はサザエさんですけれども、兄弟のカツオやワカメとは姓が違います。フグ田マスオと結婚して磯野波平の家に同居しているという構図です。こういう家族は典型的なものではありませんが、日本だとあり得るわけで、アニメの長年の放映とともに日本人にとって心の中の伝統的な大家族みたいなものを象徴するようになりました。ただ、サザエさんは結婚しているのに外に行かないで、マスオさんが磯野家に入っているという点で、少し変則的なケースです。
この一家には何十年とずっと変化がありません。アニメだから当たり前だともいえますが、実は最大の理由は、カツオが成長して結婚したとたん、この家族は構造的な矛盾を迎えるからです。カツオが結婚すると、日本のルールではこの家族は分裂せざるを得なくなります。つまり、そのとたん同じ世代に二組の夫婦ができてしまいますが、それは日本の文化の中ではあり得ないことです。もちろん韓国でもあり得ません。これが直系家族ということです。直径家族というのは、タラちゃんを入れると三世代、こういう複数の、三世代くらいまでが同居する。同居して直列で家のラインがつながっていくというパターンですけれども、ただし、その場合に絶対的な条件がありまして、一つの世代には一組の夫婦しかないということです。もし、サザエさんの家庭が普通の時間に沿って成長を続けていくと、このドラマは違うものになってしまうわけです。カツオが結婚した途端、この家は分裂せざるを得ないということです。
ただし、普通は日本でも多くの場合はやはり女性は結婚すると外にでますが、こういうのもOKなんです。だから、後ほどまたお話ししますけれど、直系家族で父系、父から長男へという家督権の流れがあるのを父系といい、一応日本もそうなのですが、これはかならずしもそうじゃないですよね。娘夫婦と一緒に暮らしています。カツオがもし結婚した場合、予想できる展開としてはフグ田一家が出て行くことですよね。もう一つのパターンは、カツオが出て行くということもあり得ます。日本ではそれもあり得ますが、これは韓国ではあり得ない。そこが日本と似ているけれども韓国と違うところです。日本は父系でもあいまいです。双系的といいますか、日本は母系ではないですが、厳格な父系ではない。どっちかというと双系的な社会です。だから、「サザエさん」のような漫画が成り立つのですが、これは韓国では成り立たないドラマです。最近は新たな家族像が模索されてはいますが、少なくとも伝統的には韓国ではこういう家族の形はありません。