2010年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジアの家族」

第11回 土佐先生 6月30日 4/9
韓国の家族1 伝統と変化
直系家族 STEM FAMILY
今お話した直系家族についてもう一度整理しておきますと、社会学や人類学で世界中のいろいろな家族のパターンを分類したときの一つの代表的な類型にあたります。「両親と、一組の夫婦及びその子からなる家族。跡取りが世代的に受け継がれることにより、家系が直系的に維持される」というのが定義です。あと、一世代には一組の夫婦しかいてはいけないというルールについてもすでに触れましたが、これが2組以上になると本当の意味での大家族ということになります。ですから、昔は日本は大家族だったのが核家族になったという言い方をする人がいますけれども、それは厳密にはそうではなくて、大家族、あるいは複合家族と言われるものは、一世代に二組以上の夫婦が同居する家族類型ですから、日本にも韓国にもそもそも存在しません。
こういう直系家族といわれるものは、東アジア以外にもドイツなどにもありますが、世界的に見るとそれほど普遍的なタイプではなくて、もっといろいろなパターンの家族があります。また、核家族というのはイギリスやフランスの伝統から来ているものですが、それも必ずしも普遍的なものではありません。日本も、戦後はアメリカの影響もありまして、核家族化が進みましたけれども、不況などになると、最近、実家に寄宿するパラサイトとかいう現象が増えてきたという指摘があります。戦後ずっと日本は核家族化してきたと言われていますが、どうもその流れがまた怪しくなっているというか、もともと日本というのはこういう直系家族の伝統ですから、そちらに戻りつつあるということかもしれません。韓国もその同じ伝統に属しています。

韓国人にとっての家族・親族の範囲
それはともかく、同じ直系家族ですけれども、韓国人にとっての家族とか親族というのは、日本とはかなり違うということもまた厳然たる事実です。簡単に図式化しますと、韓国人にとっての家族や親族の範囲はどういうものかというと、大体4つのレベルで理解することができます。一番身近なのはchipと言われるもので、日本語でも、家というのが建物としての家と家族の両方を表すことができるように、chipというのも全く同じ意味です。建物としての家とファミリーという意味での家族、その両方の意味を持っているのがchipです。ここに属するのは、祖父母まで含めた三世代の家族というのが、伝統的には多かったということです。最近は、都市では核家族化が進んで親と子どもだけの家が増えてきています。
その次にchibanというレベルがあります。これはchipプラスanという語を合わせてchibanと言いますけれども、anというのは空間的な内という意味です。chibanで「身内」という意味を表しますが、これは韓国人にとってはごく身近な身内を指します。そして、このレベルで実は日本人にとっての最大の親族の範囲を越えてしまうのです。これは4代前まで、つまり曽祖父まで遡った上で、自分と同世代にくる8親等までを含めた範囲を指しています。これが韓国人にとってのごく身近な一族の範囲です。何か行事があったりするときに一緒に集まったり、儒教の祭祀(さいし、チェサと読む)、日本でいう法事をやるときに集まる。これも最近は都市化の影響もありまして、厳密にはここまでしょっちゅう集まっているわけではないのですけれども、伝統的にはここまでがごく近い身内です。
その上に3番目のレベルにあるのが、門中と書いてこれはムンジュンと読みますが、その前に4番目のレベルについてお話ししたほうがいいですね。これが韓国人にとっての一番最大限の親族の範囲で、同姓同本集団といわれるものです。ただし、このレベルというのは、大きな集団になると何百万人になりますから、実際はもちろん他人以上に他人ですし、日常的に会う機会はないですが、理論的にはここまで来る。それとchibanとの中間的な集団が門中といわれるもので、もうちょっと自分に関係の深い一族です。同姓同本というのは共通の始祖といわれるオリジンからずっと系譜関係をたどってきたときに含まれる一族のことです。父系のラインをたどって全部含めたのが同姓同本集団ですが、途中で派閥が分かれるわけですね。たとえば、有名人が出たとか政府の高官になったとか、あるいはどこかに移住したとか、そういう特別な祖先を起点に、分かれた一派の人たちを門中といいます。同姓同本集団は、具体的には本貫と姓で確認することができますが、それを次に説明いたします。