2010年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジアの家族」

第11回 土佐先生 6月30日 6/9
韓国の家族1 伝統と変化
この姓はどのくらいあるかというと、韓国人の名前の実例に触れてみてお気付きの方も多いと思いますが、非常に種類が少ないです。全部合わせても2000年の国勢調査で286しかありません。で、286の姓が、全部それぞれが同じ一族かというとそうではなくて、本貫まで一緒じゃないとだめなのですが、本貫の数は4,000以上あります。しかし、非常に不均等でして、5大姓といわれるものが圧倒しています。一番多いのは金で、それだけで21.6%。今、韓国の人口は4,900万人ぐらいですが、金だけで1,000万人ぐらいになる計算です。李さんは14.8%、朴さんは8.5%、崔さんは4.7%、そして鄭さんが4.4%。これだけで50%を越えます。 さらに本貫まで一緒だと同じ一族ですから、代表的な氏族を挙げておきます。最大の氏族は先ほどお話した金海金氏で412万人、これだけで全人口の9%くらいになります。ナンバー2が蜜陽朴(ミリャン・パク)氏で300万。3番目が全州李(チョンジュ・イ)氏ですが、これは李氏朝鮮、朝鮮時代の王様の家系ですが、251万になります。4番目が慶州金(キョンジュ・キム)氏。5番目が慶州李(キョンジュ・イ)氏ですが、これは現大統領の一族です。

親族制度の意味と機能
次に、何のためにこういう親族制度があるかと言いますと、一番目に大事なのは父系血統を守るということがまず重要なことです。具体的には、同姓同本不婚ということで、外婚制の単位になるということです。ですから、400万人以上いる金海金氏の一族はお互いに結婚できない。400万人というのは、さっき見たように全人口の9%ですね。現代のように流動的な社会環境で、これだけの数がお互いめぐり合う確率はそんなに小さくないですよね。大都市で、パッと見知らぬ他人として会ってみたら実は同じ一族だった、それで、もし二人が愛し合って子どもでも生まれたらどうなるかということです。これは架空の話ではなくて、実際に時々ある話なんですね。それが一つの争点になって法律の改正まで至ったという話を、次回で触れるつもりです。しかし、伝統的には韓国の家族というのはこういうルールでやってきたということです。 それ以外に韓国の親族制度の特徴として、中国の五行説から来ている世代原理、長男が一族を引き継ぐ長子相続、血の観念が強い純血主義などが挙げられますが、ここでは省かせていただきます。

こういう特徴を持った親族制度ですが、日常生活にはあまり影響がないと見ることもできるかもしれません。しかし、結婚という人生の一大イベントにとって決定的な意味を果たします。外婚制の基準、つまり誰と結婚していいか、いけないかを決めるときにこれが大きな意味を持つわけです。2番目は祭祀(チェサ)、つまり儒教の祖先儀礼を行うときに、親族というものが非常に意味を持ちます。
3番目に、族譜、Chokpoと呼ばれる家系図がありますが、その編纂、刊行のために親族組織があるといえます。今の韓国人に聞くと族譜を持っていない人というのはまずいない。次回お話しできると思うのですが、誰でも持っているというのは実はこれ非常におかしな話です。というのは、日本には韓国人の親族にあたるものがないとお話ししましたけれども、実は全くないわけではなくて、あるとしたら、例えば天皇家ですとか、お茶の家元ですとか、そういう特別な階層にはありますよね。簡単に言いますと、それが全国民に広がっていったのが韓国だと思ったらいいかと思います。日本の場合は非常に特別な階層だけに受け継がれてきた親族制度を、韓国では全員がそれを実践しているわけですが、これはなぜか?非常に不思議なことです。
いろいろな歴史的な要因というのはありますけれども、一つは政治的道具という意味があります。あるいは、社会福祉とかそういうものがない時代には、親族というのは最後の寄るべといいますか相互扶助の基盤ですよね。そういうものが個人の生きていくにあたって非常に大きな意味を持っていました。