2010年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジアの家族」

第12回 土佐先生 7月7日 5/10
韓国の家族2 離散と民族主義のはざまで
「同姓同本禁婚」規定違憲判決
そうした変化を象徴する出来事が、同姓同本禁婚の違憲判決です。先週もお話したように、ある男女が同姓同本だったとすれば、ふたりは全く祖先を同じする一族同士ですから、結婚できません。ただし、たとえば金海金氏に属する人は400万人以上もいるので、町ですれ違った人の中にその一族に当たる確率は小さくありません。総人口の中で1割近い比率ですから、その人たち同士が結婚できないというのは、都市化とか社会的移動が激しい時代にはかなりの問題を引き起こします。実際過去にもそういうカップルが、結婚できないですから同棲して子どもまで作ったという例が幾つもあります。そういう子どもたちは法的に認知されず、戸籍もなく人権の無視ということになりますから、歴代政権は時限立法という形で救済するやり方を繰り返してきました。それに対して、8組の夫婦というか、夫婦になれないカップルが、憲法裁判所(日本の最高裁)に訴え、1997年に「同姓同本禁婚規定は人間の尊厳と幸福追求を保障する憲法の理念や規定に反する」という判決を勝ち取りました。ただし、これですぐに法律改正ということにはならないのですが、国会に対して法律を改正しなさいということです。これですんなりいくわけではなくて、それに対する反動があらわれました。

韓国氏族総連合会という団体があり、弁護士や大学教授など社会的有力者も含んでおり、それなりに影響力のある団体でけれども、そこが反対声明を出しました。一部を読んでみます。「我々、韓国氏族総連合会の全国会員一同は、天命を受けてこの地に生まれ、祖先から受け継いだ輝かしい文化遺産と美風良俗を守り、しっかり子孫に譲り渡すべき使命感を帯びているので、同姓同本禁婚法を廃棄し、近親婚禁婚法に転換・改正しようとする立法当局の亡国的処置に決死の反対をおこなうという我々の決意を満天下に告げる」と。かなり物々しい表現ですけれども、1998年10月にこのような声名を出し、憲法裁判所の判断に反対を表明したわけです。
同姓同本禁婚というのは韓国独特の法律ですが、日本を含めて諸外国では普通は近親婚禁婚法があります。3親等以内のものは結婚してはいけないとか、国によってはその範囲が違うわけですけれども、その中で韓国の同姓同本禁婚の範囲は世界で最大ですよね。儒教団体などは、伝統的な美風なので守らなくてはいけないという考え方です。それに対して、フェミニズム運動をしている人たちというのは、「これは明らかな人権侵害である」と。一般市民の支持もあり憲法裁判所もこれは違憲だという判決を下し、最終的には2005年についに民法が改正されました。

戸主制廃止運動
もう一つの論点として戸主制があります。戸主制というのは、先ほどの家父長制を支える法的な規定ですけれども、戸主というのは家長に当たるものですね。これは実は植民地時代に取り入れられた法律です。日本では戦後の民法改正でこういうものがなくなったのですが、これがむしろ韓国のほうでつい最近まで残っていたということです。具体的にはどんな問題があるかというと、現代社会というのは自由恋愛に基づいて結婚する人が大多数を占めるので、その分、離婚とかも増えますし再婚も増えますよね。そうするとどうなるか。先ほどの例でいきますと、金さんと李さんが結婚して、子どもはそうすると必ず父親の姓を受け継ぎますから金になります。ところがこの二人が離婚したとします。離婚して母親と同居したときに、母親は李さんなのに子どもは金になるわけですね。姓というのは一生変わらないですから。そうすると、学校でいじめにあうこともあります。それよりは、母親と一緒に住んでいるのだったら、母親の姓を受け継ぐようにしたっていいじゃないかと、簡単に言えばそういうことです。あるいは、相続の順番が今まで長男と次男では不均衡があったのを、それを平等にするということです。