2010年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジアの家族」

第12回 土佐先生 7月7日 6/10
韓国の家族2 離散と民族主義のはざまで
むしろ日本の戦前の民法に近いものが、韓国ではつい最近まで残っていたということです。さっきの同姓同本禁婚も、それに似たものはもちろん中国が本家ですが、中国では実は1930年代ぐらいにはそういう法律はなくなりました。そういうものが逆に韓国ではずっと古くまで残っていて、法的になくなったのが2005年だということです。これは社会習慣ですので、法的には決着がついたのですが、もちろん今でもどちらかというと同じ姓の人は結婚を避けるという傾向は簡単にはなくなっていませんが、意識としてはそちらの方向にどんどん向かっていっているということですね。

歴史的な大枠としてはまず日本による植民地支配、そして解放後の軍事独裁政権、そういうものがいわゆる家父長制というものを強化する方向に向かい、そうした流れが族譜の普及に拍車をかけたわけです。近代化にともなう身分制の解体がどういう方向に作用したかというと、韓国の場合はむしろ先週お話したようにみんな自分が両班だと言うようになったということですね。もともと半分以上の人は実は姓を持っていなかったし、族譜などもないはずなのですが、今生きている韓国人に聞くと全員が持っているし、全員がもちろん姓も持っている。
先ほどの創氏改名のときちょっとお話するのを忘れましたけれど、純粋な両班にとっては、日本風の姓に変えろという圧力が陰に陽にかかることは、大きな屈辱だったに違いないと思います。しかし、その時代まだ姓を持っていなかった人というのはかなりいるわけですね。それが創氏改名によってみんなファミリーネームを名乗りだすことができたという面もあります。植民地時代というのは一つのターニングポイントで、それによって伝統的な家族制度が弱まるどころかむしろ強化されたともいえます。それで、皆が家系図を持ち出して両班の末裔だと言い出すようになり、そういう傾向がごく最近まで続いていたということですよね。そういう傾向は、国家からみると利用しやすいといいますか、動員しやすい体質を作っていた。しかし、それにたいしてフェミニズム団体などをはじめとする市民運動が盛り上がって、いろいろな変化が起きているというのが韓国の現状です。

グローバル化と家族の変化
韓国社会の変化ですけれども、ここまでの話を聞くと韓国というのは非常に変化が遅いという印象を受けられるかもしれません。実はその逆でして、韓国ほど変化が激しい社会というのも珍しいといえます。それについて幾つかの指標をあげて説明したいのですが、まず一つは離婚率です。儒教的な家族制度と価値観が生きていれば、これは低くなります。女性は「三従」という従属的な立場にあるというのが儒教的な価値観ですけれど、実際には1990年代後半から離婚率が急上昇しています。それまでは日本などのほうが離婚率は上だったのですが、もう今や世界有数の離婚率の高い社会です。グラフで見ますと、デンマークやアメリカなどは昔からですけれども、最近になって特に高くなったのは韓国とロシアです。ロシアもまた、近年は社会不安だとか社会変化がものすごく激しい社会として知られています。韓国もそれに負けず劣らず高い離婚率になろうとしています。