2010年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジアの家族」

第8回 辻村先生 6月9日 1/5
古代エジプトの家族像 アクナテン王の反乱
皆さん、おはようございます。
先週は、現代のイスラーム社会の家族という内容でお話しさせていただきましたけれども、今日はエジプトの古代のお話をしようと思います。王家を初めとする古代エジプト人の家族についてです。副題としまして「アクナテン王の反乱」と書きましたけれども、アクナテン王というのは、それまでの伝統的なエジプトの宗教を廃して太陽神だけを信仰の対象とする一神教に変えようとした王です。
ご存知のように、エジプトの王はファラオと呼ばれました。古代王朝が開かれましたのは、紀元前3500年ですから、今から5,500年前のことです。地図を見てください。これがナイル川です。アフリカのエチオピア高原からスーダンを経てエジプトに流れる世界一の長さをもつ川です。ここがエジプトの首都であるカイロです。これよりも南側を上エジプトと呼んでいました。カイロから北側の非常に豊かなデルタ地帯を下エジプト。2つの勢力に分かれていて、どちらも大きな文化圏を形成していたのですが、上エジプトの勢力が下エジプトの勢力を軍事的に制圧することによって世界で初めての統一王国が成立しました。
最初にお話しするのが、カイロのすぐ近くにあるギザ台地に眠るファラオの家族です。クフ、カフラー、メンカウラーという3人のファラオたちのピラミッドが並んでいます。
メソポタミアの王が神々を祭る神官の代表者として神官王(プリーストキング)と呼ばれるのに対して、エジプトの王は神王(ゴットキング)と呼ばれています。具体的に言うと、古代のエジプトの王というのは生きている間は地上の支配者として君臨するわけですが、亡くなると天上界に戻って神々の世界の一員になるのです。ですから、メソポタミアの王はあくまでも人間であるのに、ファラオは人間として支配するけれども、本質的に神であるという性格を持っているのです。ファラオがもつ神としての権威は先代の王の娘を通じて伝わるため、その女性と結婚することによって神性が次のファラオに引き継がれると考えられていました。ですから、単に父親から息子というのではなくて、王の娘という女性のほうの血統が非常に大切なわけです。
皆さんにお配りしている資料を見ていただきましょうか。ややこしい名前がいっぱい出てまいります。最初に出てきますフニ、これはファラオです。フニにはメルサンクという正妃がいて、彼女との間に生まれた王がスネフェル王です。もう一人、別の女性から生まれたヘテプヘルスという王女がいます。この2人が結婚をいたします。父親は同じだけれども違う女性から生まれた、同父異母兄妹です。その子どもたちが結婚して生まれたのが、ギザで一番大きなピラミッドを造ったクフ王です。彼にはメリティエテスという女性と、他に2人の側室がいます。実はもっといるのですが、クフとメリティエテス王妃との間に生まれたのがカワブ王子とヘテプヘルスⅡ世という名前の王女です。カワブ王子が次の王になるはずだったのですが、この人は早くに亡くなってしまいます。それで、ヘテプヘルスⅡ世はクフ王と別の女性の間に生まれたダドフラー王子と結婚をいたします。彼らも同じ父親から生まれたいわば兄妹同士です。そしてダドフラーが王になるのですが、この人もあまり長くは生きておりません。その2人から生まれてきたのがメルサンクⅢ世という王女です。クフともう一人別の女性から生まれたのがカフラー王で、2番目に大きなピラミッドの主です。カフラー王とメルサンクⅢ世との間に生まれたのがメンカウラー王、3番目のピラミッドの主です。メルサンクⅢ世とカフラー王は同母異父兄妹です。王位継承に見られる、こうした近親者同士の結婚は、新王国時代の頃まで続きます。