2011年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジアの幸せ」

第2回 梶原先生 4月20日 6/12
夢みるアジア
これもGDPも考え方と対極的でして、GDPではいわゆる、経済的な効果を持たない労働というのは入らないわけですね。家事労働なんていうのはまさにそうで、イリイチがシャドウ・ワークということを言っていますが、陰に隠れた仕事です。もちろん家事労働を外部委託して、誰かに来てもらってやると1時間当たり幾らとか、窓ふき幾らということになるわけです。従来家事労働というのは、GDPに入らなかったわけです。けれども外に行って何か仕事をすれば、GDPに組み入れられる。そういう金銭的な物差しの中に入ってこない時間の使い方、それが幸福と非常に密接な関係を持っているということもありますので、こういうことを調べる。もちろん、経済の指標というのは全くないわけではなくて、所得であるとか生活水準、経済的なポジションというものについてもきちっと指標として調べる。そして、政府のガバナンスに対して、国民がどう幸福感を持っているかということが9番目の指標として調べられるということになっております。
ブータン憲法に書いてありますように、平和と安全と幸福というのがブータンの政府の政策で、それを追求することが政策の中心であり、それが国民総幸福の神髄だと言われております。この指標で調べると、ある時期に行われた調査では、97%の国民が幸福という範疇に入るということが言われています。
番号を申し上げなかったですね。文化の多様性が4番目です。5番目が地域の活力、6番目が環境の多様性と活力、7番目が時間の使い方とバランス。多様性を維持するということです。8が生活水準とか所得、経済的な指標。9番目が、政府のよき統治。政府のガバナンスが十分幸せに結び付いているかどうかということでございます。
もちろん、ブータンは禁煙国家です。国を挙げて禁煙で、たばこを持っていると税金をかけられる。ただ、自分のうちの庭で吸ったりするのは許されているようです。あるいは、ホテルの部屋で吸うのは許されている。私は、だらしないことにまだたばこを吸っております。ブータンに5日間行ったときに9本か10本残っているたばこ1箱を持ってまして、税関で税金を取られると思ったので出したら、「そのぐらいはいいよ」と言われました。
もちろん街の中で吸うところはありませんので、5日間でちょうどなくなりました。ただ、たばこがブータンに全然入ってこないかというと、密輸も含めてチベット経由とかインド経由で相当入っているという話も聞きました。ただ、街で吸っている姿は全く見ません。
さっき申し上げた7番目の時間の使い方とバランス、労働と余暇とか、そういうもののバランスをどう取っているかという指標をどのように調べるかというと、性別や年齢別、居住地域の差を考慮しているようです。ブータンは小さい国ですが、南北東西、生態学的にも環境的にも気候的にも違いがあります。一番高いところはヒマラヤの山ですから7千何百メートルあるような高地が北にあって、急峻に下がってきて、インドとの国境は亜熱帯のジャングルがあって、ここは海抜ゼロ、相当低い土地です。7,000メートルからゼロまでの高度差があります。西と東も、だいぶ状況が違うようです。そういう意味では、極めて豊かな自然があるところですが、地域によって生活の状況その他が相当違いますので、こういうことも調べる。
時間の使い方で大事なのは、もちろん雇用状況ですね。どんな仕事をしているか、あるいはその仕事はどういう性質のものか。それから、家族構成によっても変わってくる。先ほどの経済的な指標といいますか、所得のレベルによっても、この時間の使い方やバランスは大きく変わっていく。