2011年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジアの幸せ」

第2回 梶原先生 4月20日 7/12
夢みるアジア
そこで集計された時間仕様のデータを集めて、それを解析するということです。ボランティア活動の意味を考えれば当たり前ですけれども、ボランティア活動を行うことはある種の無償労働といいますか、無償というところに逆にお金をもらう以上の幸福感、あるいは達成感があったりするわけです。そういうものも丁寧に、この中で伝統的な、集団的な活動であるとか相互扶助、こうしたものをきめ細かく探していくことをやっております。2006年から2007年にかけてGNH、 国民総幸福を調べています。われわれの想像ですと、国勢調査をやって、全体に紙を配ってという印象があるけれども、そういうことをやっていないところがまた面白いんですね。統計学的にどのぐらいこれでうまく言えるかという質問をしたことがあるんですけれども、この年に行ったのは、先ほどの9項目というか、9つの指標のそれぞれにもう少し具体的な、副次的な質問を50あまりつくって、それを答えてもらうという質問、紙とインタビューの両方を使ってやっているわけです。
どのぐらいのサンプルを取ったかというと、15歳以上の国民に対して350。人口70万人のうちの350ですから少ないといえば少ないですけれども、ある種の統計的な根拠はあるでしょう。量的な調査というよりは、国民総幸福という概念をあくまでも数字化したり、定量的にとらえるわけですけれども、しかしながら幸福というのは普通は定性的なものとしてとらえにくいわけですから、調査そのものも大量に質問用紙をばらまいて回収するということではなくて、そこに人がきちっと、全貌が分かっている人がでかけていって、時間をかけて聞き取り調査を行うというやり方をしたと聞いております。
その結果が、先ほどの97%が幸せだったということです。これだけ複雑なことをどのぐらいの人でやっているかといいますと、この間ちょっとお話ししたダショー・カルマ・ウラという方が所長をやっているセンター・フォー・ブータン・スタディーズという国立研究所がある。その研究員というのは、10人ぐらいしかいないんですね。もちろんそこだけではなくて役所が、それほど大きくはありませんけども、10幾つありますので、そういう省庁も協力はするんですが、非常に手作りというか、小さな規模でこういうことを考えて実行している。
ただ、この広がりというのは全然ないわけではなくて、これを参考にしてほかの地域で、ほかの国で、規模はそれほどではありませんが、ブータン・モデルを使って、その地域の性格に応じて少し直して、国民総幸福を測ってみようということも行われています。
今、申し上げたダショー・カルマ・ウラというブータン研究所の所長が日本に来られたときにささやかなシンポジウムを開催しました。そのときに世界銀行の元副総裁で西水美恵子さんという有名な方がいらっしゃいますが、西水さんはこのブータンの国民総幸福については以前からご承知で、世界銀行でも重要な要素として取り上げていらしたのです。ただ、彼女はエコノミストですから、やっぱり幸福を測るということは、どうしても納得できない。幸福というのは測れないものではないか、ということをシンポジウムの席上で言われました。総幸福という概念といいますか、考え方の方向はGDPの反対概念として非常に有効であろう。しかし、幸福の量は量れないよ、ということを力説されていたわけです。
確かに、そこが国民総幸福の難しいというところです。ただカルマ・ウラという人は政治学者であり、ある種の近代合理的な人でもあって、例えば、解析とか統計処理とかを通して幸福を量ろうとする試みに意味があるとのお考えです。ですから彼自身もよく分かっていらして、幸福というものは、簡単に測れるものではないという前提はあるが、それを極力数値化することに意味がある、と。つまり、GDPに対してある種インパクトがあり得るやり方としては、人間は数字では分からんという一言では弱い。幸福をも数値化の極限まで努力をして、どのぐらいそういうものが示され得るかというところを追求したい」と言っていらっしゃいました。もちろん彼はある意味ではテクノクラート、それも非常に洗練された国際レベルにある技術官僚といいますか、いわゆる政策立案者ですから当然だと思いますけれども、こうした状況の中で指標化が進められた経緯があります。