2011年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジアの幸せ」

第8回 松岡先生 6月08日 1/4
ヒンドゥー教徒が描く「幸せな生涯」

<レジュメ>
<レジュメ>
 1.インドの宗教
 
       宗教別人口比(2001年国勢調査)
           ヒンドゥー教徒  80.5%  |  仏教徒       0.8%
           イスラーム教徒  13.4%  |  ジャイナ教徒    0.4%
           キリスト教徒    2.3%  |  その他の宗教の信者 0.6%
           シク教徒      1.9%  |  宗教への言及なし  0.1%
           <参考>全人口12億1千万人(2011年調査暫定値)
          
2.ヒンドゥー教とは

  ①ヒンドゥー教の成立
    バラモン教〜紀元前バラモン階級を中心に、ヴェーダ聖典に基づいて発達した宗教。ヴェーダ聖典
          とは、紀元前1200〜1000を中核とした数百年の間に成立した「リグ・ヴェーダ」等の
          4つの聖典で、儀式で唱えられる賛歌や呪文、祭式の諸規則、奥義、哲学的考察等が
          述べられている。
             仏教〜ゴータマ・ブッダ(紀元前560〜480頃/紀元前460〜380頃の二説あり)が35歳の時
          ボードガヤー(ブッダガヤー)で悟りを開いて始めた宗教
   ヒンドゥー教〜紀元前6〜4世紀にヴェーダ文化の枠組みが崩壊し、バラモン教が土着の民間信仰
          などを吸収して大きく変貌を遂げたもの

  ②ヒンドゥー教の神々
      三大神〜シヴァ、ブラフマー、ヴィシュヌ

 3.ヒンドゥー教徒として生きる
 
  ①ヒンドゥー教徒の通過儀礼(16のサンスカーラ/◎印は特に重要な儀礼)
    ・懐胎(受精)儀礼〜理想的な受胎日に、心を清め、マントラを唱えて交合
    ・男児選択儀礼〜受胎の確認ののち、男児の出産を願う
    ・分髪儀礼〜妊婦の髪の毛を分ける
    ◎誕生儀礼〜出産時
    ・命名儀礼〜誕生後10日目か12日目
    ・出遊儀礼〜赤ん坊を初めて外に出し、日光に当てる
    ・食い初め儀礼〜赤ん坊に初めて固形食を与える
    ・結髻儀礼〜第1年目か第3年目。後頭部に一房の髻を残して剃髪
    ・耳朶に穴を開ける儀礼〜3歳から5歳の間
    ・入学儀礼〜5歳または7歳で文字を習い始める
    ◎入門儀礼〜聖なる紐を身につけ、ヒンドゥー教徒として「再生」する。上位3カーストのみに許
          される儀式。8歳〜24歳の間に行う。
    ・ヴェーダ学習開始儀礼
    ・髭剃儀礼〜母の胎内に宿ってから16年目に口髭または頭髪と秘毛を剃る
    ・帰家儀礼〜学生期を終えて帰宅する
    ◎結婚式
    ◎葬送儀礼

   ②ヒンドゥー教徒の1年(北西インド/2011年)
       
     1月14日 マカラ・サンクラーンティ〜太陽がマカル宮に入る、太陽暦の元旦
     2月 8日 ヴァサンタ・パンチャミー〜学問・技芸の神サラスヴァティー女神の祭
     3月 2日 マハー・シヴァラートリー〜"シヴァ大夜祭"の意味でシヴァ神の祭礼
     3月19日 ホーリー〜春の訪れを祝う祭で、人々が色粉や色水を掛け合う
     4月12日 ラーマ・ナヴァミー〜ラーマ生誕祭。「ラーマーヤナ」が朗読される
     8月13日 ラクシャー・バンダン〜姉妹が兄弟の手首に守り紐を巻く
     8月22日 ジャンマ・アシュタミー〜クリシュナ神の生誕祭
     9月 1日 ガネーシャ・チャトゥルティー〜ガネーシャ神生誕祭
    10月 6日 ダシャヘラー〜「ラーマーヤナ」のラーマが魔王ラーヴァナを倒した日
    10月16日 カルワーチョート〜夫の無事を祈り、妻が月の出まで断食する
    10月25日 ディワーリー〜ラクシュミー女神を祭る光の祭。商売人の新年にあたる

  ③ヒンドゥー教徒の精神的拠り所
    「マハーバーラタ」〜"バラタ族の戦争を物語る大史詩"という意味で全18巻
      ・登場人物
        パーンダヴァ
                 パーンドゥー王          王子ユディシュティラ
                  |--------- 王子アルジュナ
                 クンティー妃      王子ビーマナクラ }- ドラウパティー
                  |--------- 王子ナクラ              (5王子共通の妻)
                 マードゥリー妃     王子サハデーヴァ
      
              カウラヴァ
                 ドリタラーシュトラ王
                  |--------- ドゥルヨーダナら百王子
                 ガーンダーリー妃
          
             ・「バガヴァッド・ギーター」〜戦いに際し、クリシュナ神がアルジュナを励ます
            「ラーマーヤナ」〜"ラーマ王子の行状記"という意味で全7巻。3世紀頃成立。
         
             ・登場人物
          
               ダシャラタ王
                 |-------ラーマ王子          猿王ヴァーリン
                 |         |            猿王スグリーヴァ
                 |        シーター姫         猿の武将ハヌマーン
               カウサリヤー妃
                 |-------バラタ王子
               カイケーイー妃
                 |-------ラクシュマナ王子       魔王ラーヴァナ
               スミトラー妃    シャトルグナ王子       妹シュールパナカー
          
  ④ヒンドゥー教徒の理想の生涯〜人生の四大目的
           (1)ダルマ(法、行為の規範)〜正しい生き方を追究する
              ・種姓法〜4種姓それぞれに課された法を守る
                四種姓(ヴァルナ) バラモン(僧侶)  ¬
                          クシャトリヤ(王侯) |再生族
                          ヴァイシャ(庶民)   」
                          シュードラ(隷属民)
              ・生活期法
                四住期(男性)   学生期〜禁欲して学問する
                          家住期〜結婚し、家庭を築いて子をなす
                          林棲期〜家長の義務を果たし引退する
                          遍歴期〜社会を超越する
           (2)アルタ(実利)〜物質的・経済的利益を追求する
           (3)カーマ(愛欲)〜愛情・性愛を追究する
           (4)モークシャ(解脱)〜輪廻から解放され、解脱を得る
          
  ⑤ヒンドゥー教徒の女性の幸せ
           ・女性に対する見方
            A.女性は敬われるべき存在〜妻は家に幸運をもたらす光明
            B.女性の自立性は認めない〜女性は父、夫、息子に従属するべし
           ・女性の幸せ
             幸せな結婚をする
             ↓
             子供、特に家を維持する男児を産む
             ↓
             夫が長らく存命である
             ↓
             夫亡き後は未亡人として生き、夫の後を追う
          
       [参考文献]
          橋本泰元・宮本久義・山下博司『ヒンドゥー教の事典』東京堂出版、2005.