2011年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジアの幸せ」

第11回 土佐先生 6月29日 1/7
韓国~祖国の幸福と個人の幸福
1.幸福論の流行
毎年ここでアジアに関する連続講義を担当してきましたが、今年は「幸福」ということで、非常に難しいお題をいただきました。
私自身の考えを整理する意味も含めまして、まずなぜ幸福というものが今問題になるかということをちょっと考えてみました。1つの手がかりとしまして、マガジンプラスという、日本で出ている雑誌の中身を全部検索できるサービスを使ってみました。例えば「幸福」というキーワードで幸福に関する記事がどのぐらいあるか調べられます。これを年ごとの変遷で示してみると、非常にはっきりとした変化が出てきます。
80年代以前は、幸福というものがテーマになった雑誌の記事がほとんどありません。これはよく言われることですけども、高度成長までの日本は物質的な豊かさ、お金や繁栄、消費などを追い求めて、幸福みたいなキーワードは人々の関心になることがあまりなかったわけです。そういう結果が、これにもはっきり出ていると思うのです。
80年代以降は少しずつ出て来て、バブル崩壊ぐらいからだんだん増え、特に劇的に増えているのは最近ですね。年間200件を超えるようになったのは、2005年を超えてからです。最近は、幸福について書かれている記事が年に300件を超えるという状況です。

Magazine Plus キーワード「幸福」で検索した記事数

最近の日本で、幸福について目立った動きが2つあります。1つは、内閣府が幸福度に関する研究会を開き、有識者を集めて今も続けています。これが始まったのが去年ですね。
もう1つ有名なのは、GNHというブータンで始まった考え方の日本版というか、東京都荒川区がGAH、「荒川区民総幸福度」というポリシーを掲げているという例があります。これも、始まったのは去年です。ごく最近になって、幸福に注目が集まっている。これは何だろうかということです 。
1つの大きなきっかけを提供したのが、この連続講義でも何度も出たことがあると思いますけども、ブータンで始まったGNHという考え方ですよね。Gross National Happinessの頭文字を取ったもので、日本語にすると「国民総幸福量」と普通は訳します。話題になったのは最近ですが、始まったのは1972年、今から40年ぐらい前のことです。ブータンのワンチュク国王が初めてそういう考え方を提言して、物質的には貧しいけども、精神的に豊かな社会を目指す1つのキーワードとして有名になりました。これが今の日本にまで伝わり、地域行政とか政府にまで大きな影響を与えるようになったということです。
影響を受けたのは日本だけでなく、西洋でも幸福を大切な課題としてとらえ、指標化しようとするさまざまな試みがあります。たとえば、世界幸福地図というものがありますが、イギリスの研究者が始めた指標です。ちなみにこの世界幸福地図で見ると、1位はデンマーク、アメリカは23位ぐらいで、日本は90位、韓国は102位です。
地球幸福度指数(Happy Planet Index)というのも有名な指数です。こちらでは、トップは中南米のほうですね。1位がグアテマラです。やはり、韓国や日本はそんなに高くない。アメリカは、この指数では日本よりも低い。こういうふうに幸福を量るということが、1つの世界的な流行にもなっていますけども、必ずしもその基準ははっきりしているわけではなくて、測り方よってかなり違うということですね。にもかかわらず、大体この手の指標の中で、日本とか韓国はあまり高くない。これを、まず胸にとどめておいていただきたいのです。
もう1つだけ紹介します。これは世界各地で5年ごとに共同で行っている、「自分は幸せと思うか」という主観的な幸福度の調査です。これによれば、一番幸福だという人々の比率が高い国として、ニュージーランド、ノルウェー、スウェーデン、カナダ、マレーシアという国が並んでいます。この中で韓国は23位、日本は24位ですね。