2011年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジアの幸せ」

第12回 土佐先生 7月06日 2/6
日韓若者の幸福のゆくえ
これは昔の儀礼だけではなくて、実は今日のメジャーな映画の中に、かなりの割合でそういうとらえ方、価値観、感受性みたいなものが見られるということです。そういう歴史意識といいますか、感じ方というのは韓国人だけではないんですけども、やっぱり際立っています。
ここで日本と比較してみましょう。日本の歴代ベストテンの映画のタイトルを見てみますと、まず目につくのは圧倒的に宮崎駿のアニメです。この中では「千と千尋の神隠し」、「ハウルの動く城」、「もののけ姫」、「崖の上のポニョ」と4つ入っています。あとは、外国映画、特にアメリカ映画の占める率が韓国より高いっていうことですね。「タイタニック」とか「ハリー・ポッター」が2本入っていますよね。さらに「アバター」と「E.T.」。半分は外国映画です 。



日本で大衆的に人気のある映画には、いわゆるシリアスドラマが見あたりません。
「踊る大捜査線」というのはジャンルとしては確かにドラマなんですけども、本当の葛藤を表現しているものではありません。要するに一言でいいますと、日本の映画で人気があるのはファンタジーが圧倒的に多いんです。現実の人間世界の葛藤や苦しみを描いているというよりは、おとぎの国の世界を描いているもののほうが人気があるんです。
日本の中にも現実の葛藤、裁判や社会的事件や歴史的悲劇を描いたものがありますけれども、なかなかそういう作品はメジャーにはなりません。韓国の場合は、深刻な恨みつらみをブロックバスター、大ヒット作に仕立て上げて、それが国民的な想像力の表象として受け入れられている、これがやっぱり日本とかなり違う部分だと思います。今日はあえて触れませんが、そうした映画がメジャーになる背景として、80年代までは軍事政権によって表現の自由が制限されていたという事情もあります。
日本で韓国ドラマの人気がある1つの理由っていうのは、日本のドラマはやはりファンタジーなんですね、その中に人間の葛藤とかいうものが描かれない。そういう日本のドラマがそぎ落としてきた部分を、一部の視聴者が韓国ドラマを通じてあえて追い求めているところがあるのではないかと思います。
韓国ドラマはしょっちゅう喧嘩したり、誰かが誰かを嫉妬したり、引きずり落としたり、そういうのが必ず入ってきます。それがドラマの必須の要素です。日本の場合はそういうドロドロしたものをそぎ取ってきれいなファンタジーにしちゃうんです。
映画が中心に扱う主題というものも、宮崎アニメなんかは特徴的ですけども、日本の場合は人間社会そのものよりは自然との一体感とか、和合、調和みたいなものに向かう傾向が強いんですね。一方の韓国は、ドロドロした人間的な葛藤とか愛情みたいなものにいく。どちらかというと、日本のほうは女性的だし、韓国は男性的という、こんな違いがあるんじゃないかと思います。
ここからは、そうはいうけども、実は日本と韓国の現実はすごく似ているという話です。似ていてもとらえ方とか価値観とか、感受性っていうのは結構違うということを同時に押さえておくと面白いんじゃないかと思いまして、あえて単純な比較をしてみました。

2.日韓の若者をめぐる現実
ここからは、未来を占うという意味で、日韓の若者が幸せというテーマから見たときにどう共通しているか、違っているか、そういうことに絞ってお話ししたいと思います。
まず、日韓ともにこれからはどんどん厳しい現実になっていくっていうことがあります。失業率は、世界的に見ますと日本と韓国っていうのはそんなに高いほうではありません。ロシアやヨーロッパのほうが失業率は高い。統計の方法自体に、問題があるという指摘もよくされます。しかし、全体的に見ると一番高いほうのクラスではありません。韓国は、1997年末にいわゆるIMF危機が起きて、その時に一時期失業率が上がってます。日本はまだそんなに高くはないんですけども、やはりずるずると上がっているということがあります。
日本と韓国の場合に問題なのは、こういう全体的な失業率ではなくて、若者の失業率です。全体的に見ますとまだまだ3か4、せいぜい5%ぐらいですが、若年層の失業率が圧倒的に高いです。中卒・高卒の人たちが働こうとした場合には非常に難しい。一時は、12%以上の失業率になりました。その次に失業率が高いのは、大卒もそうですね。短大卒とか大卒、20歳から24歳の層、これも非常に高い。