2011年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジアの幸せ」

第12回 土佐先生 7月06日 3/6
日韓若者の幸福のゆくえ
その次は、25歳から29歳も結構高い。全体で見ると5%ぐらいですけども、若年層は10%近く、時期によっては12%という、これが日本の若者の現実です。韓国は同じというか、それ以上に深刻な現実があります。
もう一つ共通しているのは、いわゆる非正規雇用者の率の高さです。派遣社員ですとか、アルバイトだとか一時雇用というかたち、終身雇用じゃない、正規雇用じゃない率というのが、これは日本の統計ですけども、非常に高いですね。15歳から19歳の率はほとんど70%を超えている。大卒の層も、今は4割を超えているわけですね。私も大学におりまして、とにかく就職が大変だというのは今や当たり前のことになってしまって、感覚が麻痺しているようなところがあります。昔だったら、大学を出れば取りあえずどこかに就職できたというようなことが今は全くないですね。韓国でも大卒の半分は非正規という現実が当たり前のようにあります。
もう一方で大学進学率を見てますと、日本は5割を超えたあたりでほとんど全入だという大学もだんだん増えています。地方の大学なんかは定員割れとかいわれてます。まだ進学していない若者が5割いるのに、なかなかこれ以上は日本の場合は増えない状況になっています。
ところが韓国は、8割以上は大学まで行きます。ここの中には専門大学とか短期大学も含まれていますけども、いわゆる高校以上の高等教育を受けている人の率は8割以上。そして、海外に留学する人も非常に多い。
そうすると、教育への投資が日本人よりはるかに大きいのです。ところが、さっき言いましたような就職難の現実というものがある。どちらのほうの絶望がより深いかというと、それは簡単には言えませんけども、やはり韓国のほうが大学まで行っても就職できないという率が日本よりも多いということですよね。ですから似たような現実がありますけども、韓国の絶望のほうがより深いといえるかと思います。

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これは新聞に出ていた風刺漫画です。この人は非正規職の人だということですね。それで、この傘は非正規職を保護する「非正規職保護法」という法律のことです。2007年にできたんですけども、労働者を保護するはずなのにそうじゃない。雨を遮るとはとても思えない上に、骨の部分が「不誠実な差別禁止規定」です。非正規職に対して普通以上に低い賃金だったりとか、悪い待遇で差別しちゃいけないという規定があることはあるんですけども、実際は労働者の権利を守ってないということですね。
さらにアンテナが付いてますけど、このアンテナはどういうことかといいますと、非正規職保護法の1つのポイントは、2年以上は非正規職を続けられないということです。2年以上続ける場合は正規職に変えないといけませんよと。政府としてはそういう意図で非正規職を正規職に変える方向へと誘導した部分があるんですけども、実際は反対。2年ごとに、全部切られちゃうと。ですから「2年ごとに大量解雇誘発アンテナ」となっています。本来は労働者の権利を守るべき傘ですけども、実際は雷を誘発して労働者は感電しているという、そういう風刺画です。
こうした過酷な現実の帰結として、両国の自殺率とも高い水準で保たれるようになりました。2008年のWHOの統計ですけども、自殺率10万人当たりの自殺者数で見ますと、1位はリトアニア、2位は韓国、3位はカザフスタン、4位はベラルーシ、5位日本、6位ロシアですね。日本と韓国以外は旧ソ連が多いんです。やはり急激な社会体制の変化によって、自殺者も増えてくる。これは分かるんですけど、韓国と日本はどうしてその同列に並ぶかということです。
韓国の場合は、1997年末に起きたIMF危機によって経済をグローバル化させていって、グローバルな経済競争に打ち勝たないといけないというかたちで、サムスンのような世界企業を一方でどんどん育てていく。ですけど、他方で底からこぼれ落ちていく人たちの現実というのは、非常に厳しいものになっています。
韓国の(そして日本の)現実の厳しさを示す指標をいくつか見てみましょう。まず、出産率はOECD加盟国の中で一番低い。日本も1.3人で非常に低いですけど、韓国は1.13。子どもを産みにくい環境というのは韓国でも同様です。韓国、シンガポール、香港、日本、この辺が共通の問題を抱えています。
高齢人口の比率は、日本の次に高くなる見込みです。2040年の予想値では、65歳以上の高齢者人口は、日本は36.5%、これは圧倒的に世界一ですよね。その次に、韓国が32.5%で、世界第2位の高齢者社会になっていく。
一方で、韓国の労働時間はOECD加盟国中で一番長い。韓国は2,316時間、日本は1,785時間。日本ももちろん高いほうでありますけども、フランスとかドイツなどに比べると、非常に高い。