2011年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジアの幸せ」

第12回 土佐先生 7月06日 5/6
日韓若者の幸福のゆくえ
3.絶望の表現
これからの日本、これからの韓国を占うときに、希望のない生き方というか、希望のない明日が、具体的にはどんなふうに表現されているでしょうか。韓国の場合は、メジャーの映画の中でも厳しい現実と向き合う部分がありましたけども、日本はどうか。ファンタジーだとさっき言いましたけども、若者の文化を見てみると、そうじゃないものがやはりあるんですね。今日は1つだけ、ご紹介しようと思います。



『進撃の巨人』という漫画です。ご覧になった方は、さすがにいらっしゃらないようですね。私も最近たまたま知ったんですけど、もし機会があったらご覧になると、今の若者の心理の一端が分かるかもしれません。この絵柄から分かるかもしれないんですけど、かなり不気味です。まだ連載中ですが、4巻が単行本で出された段階で、もう既に400万部以上売れているベストセラーです。漫画には毎年1回ランキングをする企画があるのですけども、その中の2011年度版で青年漫画の第1位を獲得しています。諫山創という作者は新人で、絵はお世辞にも洗練されているとはいえないのですけど、それがかえって不気味な世界を演出しています。
どんな漫画かというと、巨人が人間を捕食するのです。自然界の中で人間を捕食する存在は今はいないことになっていますけど、もし恐竜が生き残っていたらそうなっていたのかもしれない。そういう端的に動物的な恐怖を描いたものです。とにかく、理由もなく人間が食べられていく。巨人から身を守るすべがないので、人間たちは生き残ったわずかな人数だけで城壁を張り巡らして、小さな領域で暮らしている。
ところが、100年ぶりに巨人がその高さ50メートルの城壁をもろともせず侵入してきて、今闘っている最中です。闘っているというよりは一方的にやられていくという展開が圧倒的に強いもので、とにかく人類の未来というのは絶望なんです。こういうものが若者からかなりの支持を受けているというのは、私はちょっと気持ちが悪い現象だなと思っています。人気のある日本の漫画やアニメはすぐ韓国語に翻訳されますから、これもまた韓国でも同じように受けています。
韓国については、例を挙げればきりがありません。メジャーな映画の中で、自分たちはやられるという感じのストーリーが多かったということを申し上げましたけども、もう少し独立系の小さな映画まで目をやると、とにかく救いがない作品というのはいくらでも例を出せます。ここでは1つだけ、今年3月にソウルで見たばかりの映画『アニマル・タウン』を紹介します。