2012年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジア女性群像」

第9回 福田先生 6月13日 5/6
台湾:民進党女性リーダーの系譜
皆さんにお配りした資料の右側に記載されているグラフは、台湾の公職に占める女性の割合を示す図です。これは2011年に出版された報告書のデータですけれども、先ほどお話しした行政院婦女権益促進委員会による決議のような数値目標が出て、その数値目標に従って、各省庁は女性の権利を向上させる委員会を設置し、人事面をかなり見直したそうです。右側のグラフは下の青い棒が2000年の数値で、赤い棒が2010年の数値になっていますが、公職全体に占める女性の割合がかなり上がってきていることが読み取れます。特に、第3級とか第2級の公務員に占める女性の比率を見てみますと、第3級公務員の場合は3割を超えて4割近くなっていますし、第2級公務員についても目標としていた3割にかなり近い状態です。それ以外に監察院、考試院(人事院)、そして大法官などはまだ3割には達していないものの、2000年に比べるとかなりの伸びを見せてきているということが分かると思います。
それからこれは、世界的なにも評価されていることですが、立法院における女性議員の比率について、2007年法改正の影響はかなり大きく、2008年以降の女性議員の割合は3割を超えています。もう1枚お配りしたデータは、国連開発機構が発表しているジェンダー間の平等を測る指数で、それを測る指標がいくつかあるなかの一つが、女性国会議員の比率となっています。台湾は国連に加盟していませんので、台湾では行政院が独自の試算を行い、すでに国連開発機構が出しているデータと突き合わせると台湾は何位にあたるかということを発表しています。こちらは、去年発表された2008年のデータですが、台湾のジェンダー平等指数は世界の第4位だということで、台湾の政府は宣伝しました。この女性の国会議員のところを見ていただくと、台湾議会の30.4パーセントという女性議員の割合は、非常に高いことが分かるかと思います。その下に日本や韓国のデータもありますが、アジアの近隣諸国と比べても、この値は非常に高いものです。
もう少し、このデータだけでは分からない部分をご説明しますと、現在の立法院は台湾では4年に1回立法院の選挙がありまして、ちょうどこの2012年の1月に、総統選挙と立法院の選挙が同時に行われました。そのときの選挙結果は、国民党が64議席、民進党が40議席、そのほかの小政党が2〜3議席とか2議席という状況でした。国民党と民進党議員の男女比ですが、国民党の議員は64議席のうち男女の比率がおおよそ69対31、民進党は40議席のうち男女の比率は65対35でして、民進党のほうが当選した女性議員の比率は若干大きいですが、さほど変わりません。現在では国民党も民進党も、当選している議員における女性の比率は大きく変わらないと言えます。
最後に、現在の台湾の状況について少しお話ししたいと思います。現在の台湾政治を見ると、女性の地位に関して大きな不平等感があるというよりも、既にある程度の成果が出てきたという雰囲気があるかと思います。その結果、女性の参加という問題単独では、社会的弱者の問題としては論点となりにくい状況です。それよりも、台湾では少数民族の問題、外国人労働者や配偶者など「新移民」と呼ばれる人々の問題が課題となってきています。女性のなかでも、エリートの女性と弱者の女性がかなり明確に2分化される傾向があり、政治参加はエリートの女性の問題と位置づけられるために、大きな政治的争点にはならなくなってきているのが現状かと思います。
ただ、2008年以降の台湾では国民党が政権を取り戻し、馬英九総統は今回の2012年総統選挙でも、かなりの票差をつけて再選を果たしました。現在の国民党政権にとって、この女性の政治参加という論点に政治的価値がないのかというと、それは違いまして、馬英九政権は女性の政治参加や権利の向上などを推進することに積極的であるように見えます。例えば、今年に入り、台湾における行政部門では男女平等の問題を扱う部門が格上げされて、性別平等処というものが作られました。その意義はおそらく、現在の馬英九政権は中国との交流を進めながらも民主主義、人権等の普遍的価値を掲げることで、中国との違いを世界にアピールするという方針を採っていますので、「女性の地位が高い台湾」という点は台湾内外に対するアピール・ポイントになっていると推測されます。そのため、民進党政権から国民党政権に戻ったことで、台湾女性の政治参加が推進される傾向が、後退することはおそらくないと考えられます。民進党の立場から言えば、民進党政権の成果をなぜ国民党が誇らしげに宣伝するのかということになるかもしれませんけれども、馬英九政権はそういった発信を積極的に行っています。