2012年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジア女性群像」

第10回 福田先生 6月20日 3/5
中国:女性企業家の台頭とその影響力
そうは言っても、市場の論理の中で企業としてはより働ける労働力を雇用したいということは現実なので、女性のリストラ率が男性のリストラ率よりも高い状態が現在でも続いていまして、この状況をいかに改善していくのかが、政府にとっての課題となっています。たとえば、10年ぐらい前の第10次五カ年計画では、体制の側が段階就業という考え方を初めて盛り込もうとしました。つまり、これは日本で言われているM字型就業のように、女性は就業しない時期があっても----そういう考え方はそれまで中国にはあまり無かったのですが―、また職場復帰できるような制度を作ろうと試みました。しかし、これを巡ってはかなり大きな論争が起きた結果、段階就業という考え方は取り入れられず、多様な就業形式というふうに変更されました。やはり、中国女性の考え方としては、育児のために長い間仕事を休むのはおかしいという考え方がかなり根強いということが見て取れるかと思います。
そういった状況が現れているのがこちらの表の「中国の政治経済における女性」という部分で、中国の政治・経済分野における女性参加に関するデータをまとめたものです。一部のデータは先週お配りしたものと重複しますが、これを見ても、中国では―台湾もそうですが――企業における女性の地位はそれなりに高く、日本よりはかなり高い状況になっています。これは中国に関するデータを2009年、2010年、2011年と並べたものですが、女性の管理職も1名以上の企業は50パーセント以上、女性役員の比率も目覚ましく上がっていることが分かります。
他方、政治における女性の地位はどうなのかということを見ていきますと、この一番上の表は「全国人民代表大会」という中国の議会にあたる機関で、代表の中で女性がどれくらいの割合を占めているかというデータです。全国人民代表大会は代表の数が多いので女性代表だけでも600人というのは、びっくりする数字ですけれども、だいたい女性の代表の比率は20パーセントくらいで、5年ごとに再選されますが、あまり伸びていない状況です。例えば先週、台湾の場合はこれを3割以上に上げることを明確な目標としているわけですけれども、それに比べると、2割程度からあまり上昇していないというのは、女性の政治参加について目立った改善がなされていない状況と見ることができると思います。とはいえ、人民代表大会というのは中国の政治制度においては実質的な決定権をあまり持たない機構で、やはり重要なのは「党」です。では、党の中で女性がどのくらいの比率を占めているかというと、これは2007年の第17回全国党大会のデータで、今年の秋にまた第18回党大会が開かれます。そこでの女性の代表、やはりこれも20パーセントくらいです。さらに中央委員になると6パーセント、この後に中央政治局委員というのがあります。政治局になると、後でちょっとお話ししますけど女性は一人になりまして、今は政治局常務委員の中に女性はいません。そういう状況を見ると、やはり政治よりも経済の分野の方が女性の進出は進んでいるのかなという感じが致します。その根底には、就業を巡る論争を見てもわかるように、女性が働くということがある意味当然視されている社会の風潮のようなものもあると思います。
今ご説明した資料が、現在の中国の政治経済における女性の地位を示すデータでして、その推移を見てみると、毎回、党大会や人民代表大会の代表を選出する際に、党や政府のスポークスマンみたいな方が、今回は女性が前回に比べると何人多くなった、これから女性代表の率を増やしていかなければならない、という主旨の発言を毎回行うという状況がここ何回かは続いています。つまり、この15年から20年の間はずっとそれが続いていまして、女性の比率を上げていかなければいけないということは、中国政治においてかなり意識されている課題で、実際の比率も少しずつではありますけれども増えています。例えば、党大会の女性の代表の比率は、党員に占める女性の比率とだいたい同じくらいになるように選ばれているということでして、党員になる女性がもっと増えると大会の代表に選ばれる女性も増えると思われます。
企業についても、最近は中国で先ほどお話しした「婦女連合会」の他にも「女性企業家連合会」をはじめ女性の企業家を支援する団体ができ、女性の就業や起業を支援しようということは、この10年から15年くらいの間、盛んに言われ続けていることではあります。そのように考えると、改革開放が軌道に乗って以来、中国の政治経済における女性の参加はかなり急速に伸びていますし、意識されるようになっていると言えます。