2012年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジア女性群像」

第10回 福田先生 6月20日 5/5
中国:女性企業家の台頭とその影響力
これに対して、経済の分野について言うと、この楊綿綿さんに続くようなビジネスウーマン、女性企業家たちは次から次に出てきている状態です。これは、『フォーチュン』誌という経済誌の中国版が選んだ、中国で最も影響力のあるビジネスウーマンの上位5名です。『フォーチュン』誌というのは中国だけではなく、世界で影響力を持つビジネスウーマンのランキングを1998年から続けています。中国の女性はなかなかランクに入らなかったそうですが、2010年、おととしから世界のビジネスウーマンのランキングの中に中国の女性が複数入り、それが中国で大きな話題になったので、『フォーチュン』誌は中国のビジネスウーマンに特化したランキングを作成するようになったようです。これを見ていくと、楊綿綿さんももちろんランクインしていますが、それより上位に選ばれるような人も出てきています。
1位に選ばれた方は孫亜芳さんという方で、中国の「ファーウェイ(華為)」という会社の社長です。このファーウェイという会社はモバイルとか情報関係の設備を提供する会社でして、世界の中でもベスト500に入る企業だというふうに言われていて、日本にも支社があります。これは日本の支社の企業誌でして、これを見ても非常に多国籍で、女性の雇用や人材育成に力を入れていることが分かります。初めの郭さんという女性のインタビューに書いてありますが、「働く女性としてファーウェイという会社をどう思いますか?」という所に、「実績のある女性社員を積極的に管理職に登用していて、この取締役会長も女性です」というように、女性の管理職への登用などを積極的に進めている様子が窺えます。。
2位に選ばれている会社は、エアコンなどを作る会社でして、最近では日本の「ダイキン」と提携してエアコンを作ったりしています。その副社長兼総裁も女性ということです。それから、楊綿綿さんなどが続いて、5位に選ばれている張さんという方は「SOHO中国」という会社を夫と一緒に立ち上げ、企業家として影響力があるだけではなく、中国の富豪としても夫婦で色々なランキングに顔を出している夫婦のようです。こういう方が出てきているということと、さらにその下の順位になってくると、1970年代生まれの30代、40代初めぐらいの女性たちが増え、ビジネス分野では女性の進出が活発化してきていることが分かります。
ここまでのところをまとめてみますと、中国の女性リーダーの発展や活躍は、まさに現代中国の発展を象徴するように、政治よりも経済の部分で目覚ましい進展を見ることができます。本日紹介した一部の有名企業家の以外でも、最近の中国女性は労働力としても、消費者としても注目されています。中国の女性の消費を狙ったビジネスをしようというような話は、日本のビジネス誌にも頻繁に掲載されていて、化粧品やブライダル産業などが中国へどんどん進出して、中国女性をターゲットにしたビジネスを展開しています。実際、中国では女性が消費に及ぼす影響力が顕著であると言われていまして、自身の消費だけではなく、家庭全体の消費に関しても最終的な決定権は女性にあることが多いようです。
今後の課題としては、現段階で『フォーチュン』誌で選ばれているような女性たちは改革開放と共に出現した「チャイニーズ・ドリーム」の象徴のような感じで、中国の一般の方々にとって非常に関心はあるけれども、羨望のみで終わってしまっているような部分があります。これは女性だけではなく、中国社会の様々な問題一般に言えることだと思いますけれども、彼女たちの存在が中国女性全体の地位向上や、女性がより働きやすい状況を作るために、どの程度の影響を与えることができるかという点がポイントになってくるかと思います。その点を考えると、現状では都市女性の就学率が向上していたり、女性の就業率かなり上がっていたりという傾向が見て取れます。それから、起業に関しても、女性の起業がブームになっているということが伝えられてはいますけれども、そうした動きとこういった一部の象徴的な女性企業家たちの存在が、今後どのように相互作用し、中国女性の経済分野での活躍がより活発化していくのかということは注目に値します。それから、経済の分野で女性の活躍が進めば、政治の分野でももう少し女性の活躍、重要なポストへの女性の登用が進んでいくのではないかと思われます。