2012年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジア女性群像」

第5回 松岡先生 6月16日 1/6
プーラン・デーヴィーの生涯
〜"盗賊の女王"の生き方からインドを見る〜

<レジュメ>

 1インドの盗賊
  ①"ダコイト"と"バーギー"
   ・ダコイト dakait(ダークー daku)〜盗賊
   ・バーギー bagi 〜義賊、反逆者
  ②出没地
   ・チャンバル渓谷(北インド中部)〜プーラン・デーヴィー、マン・シン、グッジャルなど
   ・チラーパター森林(東インド北部)
   ・タミルナードゥ州、カルナータカ州、ケーララ州境(南インド)
      〜"サンダルウッド"ヴィーラッパン
  ③罪状
   盗み、誘拐、殺人、非合法取引(麻薬、香木、動物など)
          
2.プーラン・デーヴィーの生涯
  1963.8.10  ウッタル・プラデーシュ州ゴールハー・カー・プルワー村で生まれる
         〜姓はケーワト。カーストは船頭が生業のマッラー(シュードラ)
  1974?    11歳の時中年の男プッティラールと結婚
         〜父親デーヴィーディンは雌牛と自転車と100ルピーを受け取る
         婚家から出される
         父方の従兄マイヤーディンが一家を騙して財産を取り上げようとする
         母方の従兄カイラーシュとの恋愛事件
         パンチャーヤト(村落会議)議長の次男につきまとわれる
         従兄マイヤーディンに婚家に連れ戻されるが、再び実家へ
         マイヤーディンの財産横領に抗議し、逮捕される
  1979.7    釈放されるが、マイヤーディンの差し金(?)で盗賊グッジャルに誘拐される
         グッジャルの副官ヴィクラム・マッラーがグッジャルを殺しリーダーに
         〜プーランは既婚者だったヴィクラムの愛人となる
         タークル(クシャトリヤ)の盗賊スリーラーム・シンとラーラーラーム・シン釈放
  1980.8      2人はヴィクラムを殺し、プーランを自分たちの村ベーフマーイーに拉致
         〜プーランは複数の男によるレイプのほか、様々な辱めを受ける
         3週間後に逃亡し、盗賊マン・シンと出会って盗賊団を結成
  1981.2     ベーフマーイー村を襲撃、タークルの男22人が撃たれ、20人が死亡
         プーランはマン・シンと逃亡、その間に投降への働きかけがなされる
  1983.2     警察に投降、1万人の群衆の前で投降儀式を行う〜「8年後に釈放」の約束
  1994      新しい州首相ムラーヤム・シン・ヤーダウの働きかけで釈放
          改宗して仏教徒に
  1996      サマージワーディー(社会主義者)党から立候補し国会議員に当選
  2001.7.25    ニューデリーの自宅前で射殺〜逮捕された容疑者は「ベーフマーイー村虐殺の報復」と供述

3.差別の構造 
  ①カースト差別         <盗賊たちのジャーティ>
   四 バラモン             ↑
   種 (司祭階級)         再 
   姓 クシャトリヤ         生   タークル:スリーラーム・シン、ラーラーラーム・シン、
   ∧  (王侯・武士階級)   族        グッジャル?
   ヴァ ヴァイシャ     |
   ル  (庶民階級)         ↓
   ナ シュードラ           マッラー:プーラン・デーヴィー、ヴィクラム・マッラー
   ∨  (隷属民階級)          搾乳・牧夫カースト:マン・シン
       ――――――――――
            指定カースト(旧称:"不可触民"、ハリジャン(神の子)/現呼称:ダリト(抑圧された者))
              指定トライブ(少数部族)
  ②女性差別
   ・結婚のくびき〜父親は娘を結婚させるのが義務/持参させる婚資(=持参金、持参財)が必要
             /夫、婚家に服従/結婚は死ぬまで存続
   ・貧困〜売買婚/労働力として売られる
  ③反差別を支える信仰
   ・カーリー女神
   ・新仏教

4.プーラン・デーヴィーに民衆が託すもの
   ・反権力
   ・反上位カースト
   ・反男性優位社会
  [参考映像]    『女盗賊プーラン』    (Bandit Queen/1994/インド・イギリス/ヒンディー語)    監督:シェーカル・カプール    出演:シーマー・ビシュワース、ニルマル・パーンデー
  [参考文献]    山際素男「インド群盗伝」三一書房、1993.    プーラン・デヴィ/武者圭子訳「女盗賊プーラン」    (上・下)草思社、1997.    <原作> Phoolan Devi, Marie-Therese Cuny, & Paul Rambali "Moi, Phoolan Devi:    reine des bandits"Paris, 1996.    (同上英訳版)Phoolan Devi, Marie-Therese Cuny, & Paul Rambali     "I, Phoolan Devi: The autobiography of India's Bandit Queen" Warner Books, London, 1996 マラ・セン/鳥居千代香訳    「インド盗賊の女王 プーラン・デヴィの真実」    未来社、1998.    <原作> Mala Sen "India's Bandit Queen" Pandra, London, 1991.