2012年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジア女性群像」

第6回 松岡先生 6月23日 1/9
映画監督ミーラー・ナーイル 〜世界で羽ばたくインド女性の視点〜

<レジュメ>

1.インド映画の女性監督(* 印は女優出身/下線はインド国外在住者)とその代表作徴
   1912年   劇映画撮影開始
   1913年   初の劇映画『ハリシュチャンドラ王(Raja Harishchandra)』公開
   1926年   初の女性監督ファートマー・ベーゴム* が『妖精の国のナイチンゲール
         (Bulbul-e-Paristan)』を監督
   1931年   トーキー映画第1作→言語別製作&「ミュージカル」化
   1952年   カラー映画第1号誕生
   1959年   初のシネマスコープ作品
   1970年代  製作本数世界一に
   1981年  『チョウランギー通り36番地』アパルナ・セーン* 監督
   1982年  『パニおばさん』プレーマ・カーラント監督
   1983年  『物語』サイー・パラーンジペー監督
   1988年  『サラーム・ボンベイ!』ミーラー・ナーイル監督
   1991年  『サム・アンド・ミー』ディーパー・メーヘター監督
   1996年  『インディラ』スハーシニ・マニラトナム* 監督
   2002年  『ベッカムに恋して』グリンダル・チャッダー監督
   2007年  『オーム・シャンティ・オーム』ファラ・カーン監督
   2009年  『チャンスをつかめ!』ゾーヤー・アクタル監督

2.ミーラー・ナーイルの足跡
   1957.10.15 オリッサ州ラーウルケーラー(父親の赴任地)生まれ
          〜両親の出身地はケーララ州とパンジャーブ州
          デリー大学で社会学を専攻
   1976?    奨学金を得てハーヴァード大学へ
   1979    『Jama Masjid Street Journal』(ドキュメンタリー)
   1983    『So Far from India』(ドキュメンタリー)
   1985    『インディア・キャバレー』(ドキュメンタリー)
          [写真家ミッチ・エプスタインと結婚&離婚]
   1987    『Children of a Desired Sex』(ドキュメンタリー)
   1988     劇映画第1作『サラーム・ボンベイ!』〜カンヌ国際映画祭新人監督賞
          [ウガンダ在住インド人大学教授マハムード・マムダーニーと再婚、現在息子が1人いる]
   1991    『ミシシッピ・マサラ』
   1995    『太陽に抱かれて』
   1996    『カーマ・スートラ/愛の教科書』
   2001    『モンスーン・ウェディング』〜ヴェネチア国際映画祭グランプリ
   2002    『11'09"01/セプテンバー11』(オムニバス)
   2004    『Vanity Fair』
   2006    『その名にちなんで』
   2008    『8-eight-』(オムニバス)
   2008    『ニューヨーク、アイラブユー』(オムニバス)
   2009    『アメリア 永遠の翼』

3.『サラーム・ボンベイ!』から『モンスーン・ウェディング』へ
     『サラーム・ボンベイ!』
   (1988年/インド・イギリス・フランス・アメリカ合作/113分)
   主演:シャフィーク・サイイド、ナーナー・パーテーカル、
   ラグヴィール・ヤーダウ
   <物語>
   ボンベイ(現ムンバイ)にやってきた少年クリシュナ。下町グラント・ロードでお茶運び
   の職にありつくが、住まいは路上の一画だった。お茶を配達する得意先は娼婦宿。
   クリシュナは、マンジュという幼い娘を持つ娼婦レーカーと親しくなる。
   レーカーの部屋へは、ヤクザのバーバーが通っていた。クリシュナはバーバーの手下で、
   麻薬販売をやっているチラムとも親しくなった。ある日娼婦宿に、ネパールから少女が売られてきた。
   クリシュナは彼女を「花の16歳」と名付けて、密かに恋心を抱くのだが...。
   <テーマ>
    ・貧困
    ・ストリート・チルドレン
    ・ネパールからの売春婦

   『モンスーン・ウェディング』
   (2001年/インド/114分)
    主演:ナスィールッディーン・シャー、リレット・ドゥベー、
    ヴァスンダラ・ダース、ヴィジャイ・ラーズ
   <物語>
   ニューデリーに住むビジネスマンのラリト・ヴァルマーは、
   娘であるアディティの結婚式のことで頭がいっぱい。ウェディング・プランナーの
   ドゥべーのお尻を叩いては、家の飾り付けに余念がない。
   相手はアメリカ在住のインド人エンジニアで、間もなくインドに戻って来て、
   婚約式、結婚式が行われる予定だ。ヴァルマー家には、世界各地に住む親族も集まり始めた。
   だが、アディティは以前の職場の上司と不倫関係にあり、どうしても彼を思い切れない。
   果たして結婚は予定通りに進行するのか...。
   <テーマ>
    ・インド人にとっての結婚、NRI(海外在住インド人)にとっての結婚
    ・家族の絆
    ・残る身分差
    ・変貌しつつあるインド〜ウェディング・プランナー、携帯電話、インターネットテレビ、
     ポルノ映画、不倫、幼児性愛者、ゲイ

4ディアスポラとしての生き方化
  ディアスポラ=「撒き散らされたもの」という意味のギリシャ語に由来する言葉で、
                元の国家や民族の居住地を離れて暮らす国民や民族の集団ないしコミュニティ、
                またはそのように離散すること自体を指す(ウィキペディア「ディアスポラ」)
     ミーラー・ナーイルの場合
    ・軸足をインドとアメリカの両方に置く
    ・"外"からインドを見ることで、映画に批評的視点を持たせる
    ・インドの娯楽映画=ボリウッド映画へのオマージュ