2012年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジア女性群像」

第4回 宮脇先生 5月9日 2/7
中国恐妻の歴史と儒教
重慶市書記だった薄熙来が、政権闘争で捕まりましたね。奥さんの谷開来は、姉妹が香港で会社を経営していて、ものすごいお金を貯めていた。高級幹部であれば、自分の地位を使って商売するのが普通です。できることは何でもするんです。だから、日本に嫁に来た中国人女性は、自分では夫を大事にしているつもりでも、友だちや関係者や政府機関から「ちょっと働け」と普通に言われる。中国人が日本に来ると、すぐに「政府の官僚に知り合いいないの」とか「偉い人紹介して」とか言います。日本人なら、そういう関係を使って商売はしないでしょう。でも中国人はするものだと思っている。そういうギャップというか、文化的な違いを、日本人は本当に知らない。中国人は、見た目は似ているけれど背景が違う。どうして違うのか。それが漢字文化と儒教のせいなんです。
「中国恐妻」の伝統ですが、中国って別姓ですよね。薄熙来の奥さんは谷開来。女の人は結婚しても、夫の姓にならないで実家の姓のままなんです。それは、もともと結婚が、違う種族が仲良くするために娘を交換する、ということだからです。それは中国でも韓国でもそうで、女の人は一族の共有財産なんです。美人は、上流階級の妾にでもなってもらう。そうすると人間関係ができて、一族の出世につながる。日本人からしたら「21世紀のこの世に」と思うかもしれないけれど、今でも普通に、結婚は一つの手段だと信じている。だから、中国人相手に、本当の愛情とか真実なんて要求しても、うまくいきません。
恐妻の伝統はつまり、婚家先で一生よそ者で自分の場所がないから、自分が生き延びるために、夫の弱みも貯えるということです。日本でも「外に出たら7人の敵」と言いますが、中国では家の中にも敵がいるわけです。中国人はまず自分を守らなければいけない。厳しい社会で、ぼんやり人に従っていたら何されるかわからないので、いつも緊張して生きている。
私の聞いた話ですが、中国人と30年間、共同経営者だった日本人が、こんなに長く信頼し合ってきたのだから、と安心して会社を預けて帰国したら、翌日全部取られたそうです。中国人にしてみたら、全部預けられたら、もうその相手はいらない。相手とつき合う理由は、お互い役に立つから、なんですよ。何かあった時に助けてもらうために友達でいるんだから。一心同体になるということは、その時点で相手は必要なくなるということです。
じゃあどうしたらいいかというと、「私はいつまでもあんたの役に立つ人間だ」ということを示すことです。地位でもお金でもいいけど、相手に何かあったときに、私は助けになれるくらいの力がある、と思わせること。もう一つ、「まだお前の知らないことがおれには一杯あるんだぞ」と思わせる。全部出しちゃだめなんです。日本人は、中国人のお嫁さんもらったときに一心同体になろうとするから失敗する。どうぞ気をつけて、中国美人を嫁にしてください、ということを本には書いています。
今、日本にたくさんの中国人が来ています。生き延びるために努力する人たちであることは確かなので、日本の有名中学や高校の1番や2番も中国人になり、中国人学生が優秀だから、と日本企業も結構採用しています。アメリカに行くと競争がものすごい。日本は、あるところまでは大変でも、ちゃんとしてさえいれば住みやすいから、日本で生きていこう、という中国人が増えたそうです。でも、その人たちは、日本がいいと思って日本にいるけれども、同時に中国人でもあるので、文化ギャップを避けて通れない時代が来ている。この間の高速道路のバス事故でわかったと思いますが、日本人と同じだと思っちゃだめなの。もちろん中国人にもいろんなレベルの人がいるし、悪い人間ばかりではないけど、福島さんは「向こうで車に乗ると怖いのよ、想像力がないの」と言うんですね。日本人だったら、前に重い荷物を持ったトラックがいたら、避けようと思うじゃないですか。車間距離をあけるとか、追い越そうとするとか。けれどそういうことを考えて運転してない、と言いました。彼女がそういうことをブログで書いたら、一度にいろんな方面から叩かれたみたいですけど。いずれにしても、日本人と違うということを考えなくてはいけない。