2012年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジア女性群像」

第12回 土佐先生 7月04日 3/8
韓国、悪女の系譜
2人目は張緑水(チャン・ノクス)という、これも16世紀の女性です。今の一代前の王様、燕山君の時代です。朝鮮時代を代表する暴君といわれている人で、宮廷では陰謀が渦巻いていた時代です。この燕山君によって愛された人がチャン・ノクスです。非常に器量がよかったという人もいますが、器量は実は大したことがなくて、踊りがうまくて男の心を喜ばせるのが巧みだったという人と、両方の記録があります。
悪女というのはどんな存在だとイメージできるでしょうか?悪女の誕生は、権力を持った男に愛されることから始まります。それで自分が権力を手に入れていくわけですから、最初からいかにもこいつは悪いという顔をしている人は悪女になれないんです。非常に可憐といいますか、男の心をつかむ人が悪女の条件です。この人は30歳を過ぎても17、8に見えたというような記録も残っていますから、そこらへんが一つのポイントだったのでしょう。燕山君は彼女を後宮に迎え、非常に愛したといわれます。この人もやはり賤民の出身ですけども、王の心を動かすことで権力を自分のものにしました。こういう女性の最期としてよくあるパターンで、王が元気なうちは安泰ですが、王がクーデターにより廃位になった後は、文字通り首を切られるという悲惨な最期でした。
チャン・ノクスも何度もドラマ化、映画化されています。燕山君も悪名高いので、そちらにスポットライトが当たる場合もあります。『王の男』という映画は、韓国映画の興行成績として歴代ベスト3に入るような人気のある映画ですが、これも燕山君の映画です。燕山君を楽しませる芸人が主人公でしたが、この映画にももちろんチャン・ノクスの役の女性が描かれています。
もう一人は張禧嬪(チャン・ヒビン)という、17世紀の女性です。第19代の国王の嬪(ビン)。嬪というのは側室の中でもっとも位の高い人のことをいい、禧嬪(ヒビン)というのはそこから来た名前です。中人(チュンイン)の出身で、先ほどお話しした両班の下の身分でしたけれども、この人は、最後は王妃にまでなるんです。王妃というのは次の王を産んだ女性ですから、第20代国王の生母です。宮廷内の党派争いが非常に激しい時代ですが、それを生き延びただけでなく、中人出身で王妃になったのはこの人だけです。そういう下からのし上がっていく様がドラマチックで、結局は悲劇的な最期を迎えることになるので、そういう意味でもドラマチックといわれ、繰り返しドラマ化されてきました。YouTubeのものですが、『張禧嬪(チャン・ヒビン)』というドラマのビデオクリップを見ていただきます。


このドラマをご覧になった方は、いらっしゃらないようですね。韓流ドラマはたくさん日本のテレビでも放映されてますけれども、韓国と日本ではやはり人気にかなりずれがあります。ご紹介した三大悪女、あるいは三大妖婦といわれる人たちは、韓国では非常に好んで取り上げられるテーマです。この辺の感覚は、「大奥シリーズ」とか日本にもないわけじゃありません。しかしその強度といいますか、女性がのし上がって悪女になるドラマを喜ぶ感性というのは、ちょっと日本と距離があるという気がしています。