2012年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジア女性群像」

第12回 土佐先生 7月04日 4/8
韓国、悪女の系譜
2.現代社会と悪女
現代社会では朝鮮時代のような身分制は一応なくなりましたし、儒教的な伝統が今でも色濃く残っていますけれども、それ以外の価値観もたくさん入り込んできていますから、そういう意味では悪女が生まれる余地というのは段々減ってきているのかなという気はします。でも、韓国は今でもこういう悪女のイメージが好きですね。その背景には、女性の地位が低いということにあると思います。低いということでは、日本も決して高くないですが、その抑圧の仕方がちょっと違います。日本の場合は真綿でしめるように追い込んでいくというか、悪い言葉でいうとそういうような感じがあるかと思います。韓国はハンマーで叩くようなところがあり、抑圧される側も反抗せざるを得なくなります。
具体的にいくつか一般的指標をお見せします。まず、HDI、人間開発指数というのがあります。これは教育の水準とか平均寿命といった条件から見た場合に、その国で生まれた時に個人としての能力を高められる環境を指数化したものです。これが日本は9位、韓国は28位で、世界的にかなり上の方にいるということは分かります。これにジェンダーの要因を入れると、GEMというジェンダーエンパワメント指数というものになります。平たくいうと、女性がどのぐらいパワーを持っているか、という指数です。そのパワーというのは政治的なパワーもありますし、経済的なパワーもあります。
具体的には、例えば政治家、国会議員に占める女性の割合、あるいは、専門職や技術職に占める女性の割合、会社の中の管理職に占める女性の割合とか所得、こういうものから算出すると、日本は38位、韓国は68位です。さっきとの比較で見ていただきたいんですけれども、本来、人間として伸びる環境というのは日本も韓国もわりと整っているわけです。しかし、そこで女性として生まれたというだけでその能力を十分生かせない。その面での環境は日本も韓国も劣っているわけです。とくに韓国の方がドッと落ち方が激しく、68位まで落ちてしまう。これはちょっと前の数字ですので、今の韓国は少し上がって来ています。ただ、日本も韓国もいわゆるOECDの中では下の方にいます。
これが、悪女が生まれる一つの大きな背景です。しかし、日本の場合は明治以降、少しずつ良くなって、とりわけ戦後、少しずつ女性参画社会というものを作ってきたとするなら、韓国の場合はその変わり方が非常に速いということが大きな違いです。とくに1990年代後半ぐらいから、非常な速度で変わって来ています。メディアによく見られる決まり文句がいくつかありまして、一つは「吹き荒れる女風」という表現があります。どういうことか、目立った傾向を少し紹介します。
行政考試というのは、日本でいう国家公務員試験の上級職の試験です。2009年の数字ですけど、合格者の46.7%が女性です。日本でもそうですけど、非常に難しい試験です。司法試験でも合格者の35.6%が女性です。外交官試験に至っては60%が女性です。専門職でも同じような傾向が見られ、例えば医師の場合は2割が女性、歯医者もやはり2割以上、薬剤師は女性が多いのは日本も同じですけども、6割は女性です。
こんなふうに、伝統的に女性の社会進出は限られていたんですけども、最近になってその状況に大きな変化があるということです。その要因の一つは少子化の流れです。昔は兄弟が多かったので、全員を大学まで行かせることはできないとしたら、やはり男を優先するということになりますが、今は子どもが1人、2人の時代です。少子化は日本以上に深刻で、そうすると女性でも大学、あるいは大学院まで進学するのが普通になってきます。今でも人口当たりの大学進学率はアメリカと世界一を争っています。日本は大学進学率が5割で定員超過の問題が取り沙汰されていますが、韓国は8割が大学まで行きます。