2012年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジア女性群像」

第12回 土佐先生 7月04日 6/8
韓国、悪女の系譜
ここで、現代における変化を背景にしながら、悪女というものが映画の中でどう描かれているかについて、3本の作品をご紹介しながら考えみたいと思います。
1本目は『下女(ハニョ)』という映画です。これは、韓国映画の歴史を語る時に欠かせない名作です。オーソン・ウェルズ監督の『市民ケーン』という有名なアメリカ映画がありますけども、それに比肩するスタイリッシュな白黒映画だと韓国で評されています。キム・ギヨン監督が1960年に作った映画です。筋自体は近代以前の悪女に通じるような構図で、作曲家の家で雇われている下女、すなわち家政婦の話です。家主がつい、彼女の誘惑に負けて関係を結んでしまうのですが、彼女が虐げられた身分から徐々に巻き返していって、最後はその家を崩壊に追い込むような、そういう話です。弱い立場にあった女性が、妻や子どもに嫌がらせをしたり、心理合戦を繰り返したりしながら、最終的にはその家、家族全体を支配していってしまう。映画では白昼夢の体裁をとっていますが、実際にあった出来事を題材にしている映画ということでも話題になりました。当時映画館で上映された時には、「あいつを殺せ!」とか観客からいろんなやじが飛んだそうです。YouTubeでは字幕のついたクリップを見つけられませんでしたが、その雰囲気をちょっと味わっていただければと思います。


コップの水を自分が飲んで見せて、子どもに飲ませるという場面がありましたが、あの中に実はネズミの駆除薬が入っていたわけです。まず自分が飲んだふりをして、大丈夫だからといって飲ませるという、そんな意地悪をしながら家族を追い込んでいくわけです。ただ、映像的にはアーティスティックに描かれていて、あまり陰惨な感じはしないんですけど。この映画は今でもDVDで手に入りますが、一昨年ぐらいにリメイクもされており、『ハウスメイド』というタイトルで日本にも来ています。下女は身分的に下に置かれていますが、それが結局は支配する側に回る。こういう形で女性を描く系譜が、韓国映画の中にはあります。