2012年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジア女性群像」

第12回 土佐先生 7月04日 7/8
韓国、悪女の系譜
2つ目にご紹介したいのは『猟奇的な彼女』という、やはりエポックメイキングな映画です。こちらは今のようなシリアスなドラマではなくてコメディです。2001年に作られた映画で、韓国で大ヒットしました。日本でも若者を中心にかなりヒットしました。元々は人気のあるネット小説を映画化したもので、男と女の役割が転倒しているラブコメディです。「猟奇的」というのは日本でも韓国でもあまりいい言葉ではないのですが、韓国ではこの映画がきっかけになってクールなニュアンスの言葉に変わってしまいました。「変わってるけど独特の魅力を持っている」というような意味として、「猟奇的」という言葉自体も流行しました。日本では2008年にテレビドラマとしてリメイクもされました。
彼女は、悪女というよりは男まさりというべきで、かわいいところもあるという見方もできる女性です。しかしここまでの話を聞いてこられた方には、こういう作品が出てくる背景が理解できるはずですし、可憐さと悪女の条件はかならずしも矛盾しないという点も了解できると思います。現実にこんな女性はそういるわけではありませんが、しかしある一定の割合で昔からいるということでもあります。韓国というのは男社会だとよくいわれますけど、男社会というのは良妻賢母も育てますが、そこから外れた女性をこういうタイプに育てもします。悪女というのは偶然に出てくるものではないということです。ただ、それがラブコメディという軽いノリの話としてポピュラーになるのは、いかにも現代的な現象だといえるかもしれません。
最後の1本は『親切なクムジャさん』という映画で、これも日本でも上映されてます。自分の子どもを人質にとられたので、やむなく誘拐犯のいうことに従って、真犯人の身代わりになって服役した女性の話です。刑務所の中では模範囚として振る舞い、また周りに慕われ「親切なクムジャさん」と呼ばれます。実はものすごい二面性のある女性で、出所するとともに暴力的な人格を全開にして復讐に走り、真犯人を捕まえてとことん苦しめます。最近の韓国映画には非常に過激な暴力描写というのが目立ちますが、この映画にもかなり激しい暴力描写が見られます。あと、誘拐というテーマも描いているので、韓国では18歳以上でないと見られないというR-18 の指定を受けました。それでも350万人の観客動員を記録したヒット作です。


リアルなシリアスドラマというよりは、幻想的な雰囲気を保った映像ですが、恐怖を誘う映画になっています。残酷で暴力的な女性ですが、同時にきわめて無垢な美しさを体現しています。こういう女性が登場する映画はあまり日本では作られませんが、それはなぜでしょう。また、作られたとしてもこれほど大衆的な人気を誇ることはありません。皆さんにも、こういうのを見てどう感じられるかとお聞きしてみたいものです。