2013年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジアの紛争と文化力」

第7回 松岡先生 5月29日 1/6
インド:宗教と紛争
<レジュメ>

1.インドの宗教
   ヒンドゥー教〜B.C.6〜4世紀に、バラモン教が土着信仰を取り込みながら形成。
          多神教で、ブラフマー、ヴィシュヌ、シヴァの三神が中心。
          人気があるのはヴィシュヌとシヴァで、ヴィシュヌの化身であるクリシュナや
          ラーマ、シヴァの息子の象神ガネーシャらも人気。
          業(カルマ)、輪廻(サンサーラ)、解脱(モークシャ)等の考え方やカースト制度が
          バックボーンとなっている。
   イスラーム教〜610年頃のアラビア半島でムハンマド(マホメット)が始める。
          唯一全能の神アッラーを信仰し、クルアーン(コーラン)が聖典。
          1日5度の礼拝、ラマダーン月の断食、喜捨、メッカ巡礼が義務。
          偶像崇拝を禁じているが、13世紀〜16世紀に伝わった南アジアで
          は、スーフィズム(神秘主義)に基づく聖者廟崇拝も盛ん。
    キリスト教〜12使徒の1人聖トマ(トーマス)が現タミル・ナードゥ州に伝道。
          その流れを引くシリアン・クリスチャンはケーララ州に多く在住。
          16世紀にポルトガルがローマ・カトリック教を布教。
      シク教〜16世紀にグル・ナーナクを開祖として始まる。
          ヒンドゥー教とイスラーム教を批判的に統合。
       仏教〜紀元前500年頃、ゴータマ・ブッダが開祖となり始まる。
          1203年に一度消滅し、現在は新仏教徒(カースト制度に反対し、ヒンドゥー教から
          改宗した人々)とチベット仏教徒が主。
    ジャイナ教〜紀元前5〜6C、マハーヴィーラが開祖となり始まる。
          無神論的多元論で四種姓(カースト差別)を認めず、不殺生を強調。
    パールシー教(ゾロアスター教/拝火教)
          〜アフラ・マズダが唯一神で、8Cにペルシアからインド西海岸へ。
          火を神聖なものとするため、葬儀は鳥葬となる。
  ※人口比における各宗教信者の割合(2001年国勢調査/総人口10億2861万人)
    ヒンドゥー教徒 8億2758万人(80.5%)
    イスラーム教徒 1億3819万人(13.4%)
    キリスト教徒  2408万人( 2.3%)
    シク教徒    1922万人( 1.9%)
    仏教徒     796万人( 0.8%)
    ジャイナ教徒  423万人( 0.4%)
    その他     664万人( 0.6%)(パールシー教徒、ユダヤ教徒等)
2.宗教が絡む紛争の歴史
   1885  インド国民会議派(政党)が誕生→反英独立闘争へ
   1905  インド総督カーゾン、ベンガル分割令を発令、反対闘争が起きる
   1906  全インド・ムスリム(=イスラーム教徒)連盟成立
   1911  国王ジョージ5世訪印、ベンガル分割撤回、デリーへ遷都
   1940  ムスリム連盟、大会でムスリム独立国家の要求を決議
   1946  カルカッタで大規模なコミュナル暴動発生。死者5万人
   1947  インドとパキスタンが分離独立。東西パキスタンとインド間の移動でコミュナル暴動が多発する
   1948  マハートマー・ガーンディー暗殺/第1次インド・パキスタン戦争
   1965  第2次インド・パキスタン戦争
   1971  第3次インド・パキスタン戦争/バングラデシュ独立
   1984  インド軍、アムリトサルのシク教徒過激派を攻撃
        インディラー・ガーンディー首相シク教徒のSPに暗殺される
   1992-93 アヨーディヤのモスク破壊を契機にヒンドゥー教徒とムスリムが衝突、全国規模の暴動に発展
   1998  インド、24年ぶりの核実験/パキスタンも核実験を実施
   1999  オーストラリア人宣教師一家がヒンドゥー教徒過激派の襲撃で焼死
   2002  グジャラート州アフマダーバードでヒンドゥー教徒巡礼列車焼き討ち
        →ヒンドゥー教徒のムスリムへの報復事件多発する
   2008  イスラーム教徒過激派によるムンバイ同時多発テロ事件
3.紛争の構造
   ①インド・パキスタン分離独立
   ②ヒンドゥー・ナショナリズム
   ③様々な不満、抑圧のはけ口が宗教紛争に転化
4.紛争を抑止する文化力
   ①映画による啓蒙〜多宗教の人々の共存を常に意識化させる
   ②イスラーム文化に対する敬意
    ・世界遺産や観光資源の半数がイスラーム王朝時代の遺物〜タージ・マハル等建造物
    ・北インド音楽や舞踊はイスラーム王朝時代に発達
    ・北インド料理もナーンなど西方から伝わったものが多い
    ・雅語としてのウルドゥ語、ペルシア語、アラビア語
[参考文献]
 広瀬崇子、近藤正規、井上恭子、南埜猛編著「現代インドを知るための60章」明石書店、2012(第3刷).
 中島岳志「ヒンドゥー・ナショナリズム:印パ緊張の背景」中公新書ラクレ、中央公論新社、2002.