2013年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジアの紛争と文化力」

第7回 松岡先生 5月29日 2/6
インド:宗教と紛争
「紛争と文化力」という非常に難しいタイトルなのですが、インドについて3回お話し致します。今日は「宗教と紛争」についてです。
インドは「世俗国家」、英語ではSecularismと言いますが、1947年に独立した時にこの考え方を採用しました。国の宗教を定めないで、政治と宗教を切り離しています。一方、隣国パキスタンはイスラーム教が国教です。また、かつて東パキスタンと呼ばれていて、1971年にパキスタンから独立したバングラデシュも、イスラーム教が国の宗教です。それに対してインドは、どんな宗教の人でも一緒に仲良く住みましょう、というわけです。
どんな宗教の人たちが住んでいるのか、ということを簡単に紹介しましょう。インドで一番信者が多い宗教、人口12億のうちの8割が信じているのはヒンドゥー教です。昔はバラモン教といっていたものが、紀元前4世紀から6世紀くらいに地方のいろんな神様を取り込みながらひとつの宗教になっていったもので、民間信仰の神様を「それもうちの神様」「あれもうちの神様」と取り込み、ヒンドゥー教が形成されていったといわれています。
多神教ですが、三大神と呼ばれるものがあります。ブラフマーとヴィシュヌとシヴァで、多くの人は、ヴィシュヌ派かシヴァ派のどちらかに属しています。
インドの神様は、いずれもとても人間っぽいキャラクターなんですね。シヴァにはパールヴァティという妻がいて、息子も2人います。そのうち1人が象神のガネーシャで、日本でも先般、『夢をかなえるゾウ』という小説が世に出たりしたので有名になりました。

シヴァ神の一家
シヴァ神の一家。左から、息子スカンダ、シヴァ、息子ガネーシャ、パールヴァティー(民間宗教画)

シヴァと並ぶ神様、ヴィシュヌは10のキャラクターに変化し、それをアヴァターラといいます。アバターの語源ですね。10変化の中で有名なのがクリシュナという神様で、よく子供の姿で描かれるのですが、笛が上手ないたずらっ子で、成長後は女性にモテモテの青年になります。小さい時はバターミルクが大好きで、お母さんに隠れて盗み食いをしたりします。盗みをしてはいけない、と教えるのが普通の宗教ですが、神様を別世界の人とは思わずに、これも親しみを感じるエピソードと考えて信仰していくのがヒンドゥー教です。

バターミルクを食べる幼いクリシュナ(民間宗教画)
バターミルクを食べる幼いクリシュナ(民間宗教画)