2013年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジアの紛争と文化力」

第7回 松岡先生 5月29日 3/6
インド:宗教と紛争
また、古代叙事詩「ラーマーヤナ」の主人公ラーマもヴィシュヌのアヴァターラと考えられています。ラーマの妻シーター、弟のラクシュマナ、そしてシーターがランカー島の魔王ラーヴァナにさらわれた時、ラーマに協力して助け出す猿の武将ハヌマーンも尊敬を集めています。「ラーマーヤナ」は、「桃太郎」の原型ではないかと言われている物語です。

ハヌマーン、ラーマ、シーター、ラクシュマナ(民間宗教画)
左から、ハヌマーン、ラーマ、シーター、ラクシュマナ(民間宗教画)

こういう神様がたくさんいるヒンドゥー教の教えは、輪廻転生です。次の世には、何かに生まれ変わる。現世の業を背負って生まれ変わるので、現世では深く信仰する。最終的には、転生から解放されて解脱の境地に達するのが理想です。ヒンドゥー教徒にはカースト制度があって、その規範の中で皆生きていく、ということが教えられていきます。
次にイスラーム教徒ですが、イスラーム教は610年ごろアラビア半島で、ムハンマドが神の啓示を受けて始めました。多神教と違い、唯一神、アッラーを信仰します。コーラン(クルアーン)が聖なる書物で、それを信仰の拠り所としています。イスラーム教徒の義務は、1日5回聖地メッカに向かって礼拝する、ラマダーン月には断食をする、貧しい人に対して喜捨、つまり施しをする、生涯に一度メッカに巡礼に行く、というこの4つです。
イスラーム教は偶像崇拝を禁じています。ですから、アッラーの神は絵に描けません。モスクで祈る時にも、メッカの方向を向いている壁の凹みに向かって礼拝をします。でも、人間には祈りの対象が必要となることもあり、イスラーム教徒の場合はカーヴァ神殿や、モスク、あるいはアラビア文字でアッラーやムハンマドと書いたものを飾ったりすることによって、信仰の対象とすることもあります。

「アッラー」の文字(民間宗教画)
「アッラー」の文字(民間宗教画)

キリスト教の場合は、十二使徒のひとり聖トマがインドに伝道したといわれています。聖トマは今のチェンナイの近くで亡くなって、墓もあります。その古いキリスト教の流れを組むシリアン・クリスチャンの人々が南西インドに住みつき、さらに中世になってポルトガルがローマ・カトリックを布教しました、旧ポルトガル領のゴアに行きますと、非常に美しいゴシック様式の教会が今でも残っていて、まるでヨーロッパのようです。
仏教徒もいます。仏教はインドからアジア東方に広がっていった宗教ですが、インドでは1203年に一度消滅しています。ヒンドゥー教の力が強くなったからですが、インド独立の1947年前後から、ヒンドゥー教のカースト制度に反対する人々が仏教徒に改宗する例が多くなりました。そういう人は「新仏教徒(ネオブッディスト)」と呼ばれています。今インドにいる仏教徒は、新仏教徒とチベット仏教を信仰する人たちです。