2013年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジアの紛争と文化力」

第4回 土佐先生 5月08日 9/9
東アジアの領土紛争
中国や韓国にとって敵となる格好の相手はやはり日本であり、戦前の記憶があればそれはしょうがない面もあります。以前に比べると、私などが見るとけっこうこれでおさまっているように見えるんですが、最近の出来事をきっかけに急に中国や韓国に目を向けた人から見ると、「とんでもない」というふうに映るわけです。今までの歴史的なものを切り離して、いきなりそこだけを見ると、「日本人をばかにしている」と。
最近の日本というのは自信が無いというか、若者なども近現代史をきちんと学んでない上に、むしろ日本が偉いという意識が希薄なので、ああいうふうに攻撃されると余計にムカッとするところがあるんじゃないかと思います。
ですから、19世紀から20世紀の遺産というものがこの地域にはやはり今でも重くのしかかっていて、これをどう清算したらいいのという問題が残っています。これは日本だけの問題ではなくて、やはり韓国、北朝鮮、中国の権力の硬直したところというか、そういう相手側が抱える問題もあります。
あともう一つ問題なのは、自民族中心主義と結びついた国際関係に対する見方です。歴史的には中国と周辺国との国際関係を宗属関係といい、周辺国が朝貢して、それに対して皇帝が「冊封」を与え、その土地の支配者として認めるという関係を結びました。あくまで「中国が上で、周辺国は下」という関係です。それにすべての周辺国が従ったわけではなくて、特に日本は途中からそこから離脱します。
そして、日本は日本で同じような宗属関係を周辺地域に対して打ち立てようとしました。たとえば琉球に対して、あるいは蝦夷という土地に対して。つまり、伝統的にこの東アジア地域というのは、水平の対等な国際関係というのをあまり体験したことがないんです。近代に入ったら日本が植民地支配を推し進めて、やはり上下の関係が強化されましたし、戦後も東アジア共同体とかいう人がいても、なかなかリアリティのある議論まではたどり着かないわけです。
これは、繰り返しますけれども、日本だけのせいじゃありませんが、日本としてできることをまずやらないといけません。
たとえば、アメリカのおかげで日本が発展してきたことは否定できないし、アメリカと敵対する必要は全くないですけども、今のようにアメリカの手のひらに載っているままだと、東アジアの秩序というのはかえって安定しないと思います。ですから、「第三の道」をこれから模索していかないといけない。
一部の政治家や識者がいうように日本を核武装すべきだというのは、普段は北朝鮮のことをばかにしている割には北朝鮮と全く同じ発想です。日本が戦後築いてきた平和主義に勝るソフトパワーはありませんから、そういう遺産をさらに育てていかなきゃいけないと思います。ソフトパワーとは何か、あるいは文化力とは何か、これはまた来週あらためてお話ししたいと思います。
ちょっと尻切れトンボになりましたけれども、お時間になったようなので、これでおしまいにさせていただきます。