2013年度 世田谷市民大学 連続講義


「アジアの紛争と文化力」

第12回 ジンベルグ・ヤコフ先生 7月03日 1/3
北方領土問題の行方:ソ連邦崩壊の効果を中心に
2011年の東日本大震災以降、日本には新たな、今までになかった状況が生まれています。それは軍事的な脅威と非軍事的な脅威が、複雑に絡み合った新しい危機です。ロシア外務省付属の、モスクワ国立国際関係研究所東洋学科長であるドミトリー・ストレリツォフ博士によると、福島は日本にとって三重の打撃となったというふうに指摘しています。まず第1に指摘すべきなのは、この悲劇の規模の大きさである。第2には複合的な災害という指摘であり、これは地震、津波そして放射能の3つであります。3つの打撃のうち、地震と津波は一応収束したと考えられますけれども、私に言わせると、放射能については解決されていないだけではなく、その危機は事実上継続し、さらに大きくなってきています。また日本は、現時点において、日本の歴史全体を見ると、おそらく最悪の国際協定を結ぼうとしています。いわゆるTPP協定は、私に言わせると、日本人の生活の基盤、また日本人の文化そのものを、破戒しかねない存在になるかと思います。
そしてストレリツォフ博士の見解ですが、3番目にはこれらの諸問題を解決するために、地球的な規模での、安全保障を維持する協力体制が、必要であると主張しています。しかし非軍事的な脅威に加えて、深刻な軍事的な脅威が加わっていると指摘すべきであると、私は考えています。それは、日中関係悪化の結果、日本のエネルギー分野での安全保障に直接関連している、まさに軍事脅威であるもので、すなわちマラッカ海峡、スンダ、ロンボク海峡を通る海路が閉鎖されると、日本にとって非常に大きな比重を占める、中東地域からの石油供給に、支障が生じかねないということであります。さらに将来的に例えば中国が、南シナ海周辺全体に指導権を握るようになると、中国は、日本への中東石油の大部分が通る、バシー海峡及び台湾海峡の航行を、管理下に収めることになるという危険性もあります。
このような背景には、アメリカ元大統領ジミー・カーターが唱えた、いわゆるカーター・ドクトリンが挙げられます。1980年1月23日に、カーター大統領が次のような宣言を行いました。宣言の趣旨は、ペルシャ湾からの石油の流れを阻止しようとするいかなる試みも、アメリカの安全に対する脅威と見なされるということであります。さらにそのような試みに対して、あらゆる軍事的な手段を使ってやめさせるということでもあります。しかも、中東地域からアメリカ向けの石油調達ルートを守るために、いわゆる緊急展開統合任務部隊の作戦を命じました。それ以来、カーター・ドクトリンは一貫して強化され、そしてアメリカは、石油調達ルートが阻害されるという脅威に対して、常に軍事的な措置を使うということをほのめかしてきました。アメリカは、このような軍事行動に掛かる費用を、ペルシャ湾地域のみに限定しても、毎年290億から800億ドルほど使ってきました。結局1980年以降、アメリカ政府は、国家の安全とエネルギー資源確保を、直接に関連したまさに軍事的な問題と見なしてきたわけであります。
一方エネルギー源別に見ると、一次エネルギー消費の中で、最大のシェアを占めるのは依然として石油です。発電の構成を見ても、2035年においても、化石燃料がエネルギーの主役を担い続けると、2012年の12月に『週刊東洋経済』が伝えました。そして「石油通信」の石油統計速報によると、去年11月の日本の原油輸入に占める中東依存度は、相変わらず非常に高く、81.5パーセントとなっていると報道されています。
他方では、今年の初め1月9日に、ロシアの『イタルタス通信』に伝えたところでは、日本の財務省は、2012年1月から12月にかけての日露間の貿易額は、ほぼ280億ドルに達し、昨年同期と比較して、10億ドルの増加になったと発表しています。2011年の両国の貿易は記録的な規模に達し、およそ307億ドルとなりました。この数字は今後も増加すると考えられます。ロシア側の主な輸出費品目は、石油、石油製品そして液化天然ガスLNG、非鉄金属です。日本からの対ロシア輸出は、伝統的に自動車や機械が非常に多いです。
ロシアの『イタルタス通信』によると、日本の企業は、記録的なスピードでロシアへの投資を拡大し、2011年の投資額は昨年に比較して37.7パーセント増加しました。この過程で重要なステップとなったのは、ロシアのガスプロム社と日本の複数の企業が締結した、共同プロジェクトに関する覚え書きです。これは、ウラジオストク郊外に、大規模な液化天然ガス工場を建設するという内容であります。これは、ロシアでは2番目の液化天然ガスコンビナートであり、最初に建設された工場は、現在サハリン島で稼働し、世界トップクラスの規模を持っています。この工場も日本の企業との協力で建設されたもので、このコンビナートが生産する液化天然ガスの大半は、日本が買い付けています。
さらに自動車組み立ての分野においても協力が進んでいると、『イタルタス通信』が伝えています。ロシアでは2011年の1月から7月にかけて、ほぼ170万台の乗用車が販売されました。これは一年前の同期と比較して、14パーセントの増加であります。自動車市場の規模では、ロシアはドイツに迫る勢いで、間もなくヨーロッパでトップになると見られています。専門家の評価では、2015年までにロシア連邦において、自動車の生産は、2011年と比べれば13パーセント増加し、年間300万台レベルに達する見込みであります。こうした事実が、日本のビジネス界の注目をますます引き付けています。以前は夢物語のように思われた、日本とサハリンとを結ぶガスパイプライン建設が、再び現実の課題として議論されるようになっていると、『イタルタス通信』は報道しています。