2014年度 世田谷市民大学 連続講義


「生まれるアジア、老いるアジア」

第3回 青柳先生 9月29日 2/6
「命どう宝」の今昔―琉球生命観とその変貌
私がフィールドワークを行ってきたヤンバルには豊かな自然環境あるいは生態系が広がっていて、その中に平均200世帯・600人規模の集落が点在し、本島北部最大の街である名護市(2014年現在のカウントで27,000世帯62,000人規模)が位置していますが、この一帯は在日米軍の再編計画―殊に日米同盟政策下での宜野湾市普天間基地の名護市辺野古への移設―に伴う様々な開発が問題にされ、こうした背景から「命」や「伝統」を守っていくことの大切さが強く意識され、人々の間で議論されます。「地域的なアイデンティティーの形成」という意味では、子供たちも若者も、温存され続けてきた部落の年中行事、青年会や成人会への義務的な参加、あるいは地元を意識した学校教育を通して伝統的なものの考え方やライフスタイルを受け継いでいく態勢が整っていることがわかります。その一方で、必ずしも排他的ではないものの、余所から入ってくるもの―それが人にせよものにせよ、トレンドや価値観にせよ―に敏感に反応し、自分たちとの関連性を判断する傾向も強いということがわかります。
現地でいう「宝たる生命」とは即ち「先祖代々に受け継がれてきたそうした地元の態勢の中で生まれ、見守られ、育まれていく自分たちの命」という意味合いを持っているということですが、ではそうした命がどのように秩序建てられるかを詳しく、ヴィジュアルに紹介して参りたいと思います。守秘主義的な立場からも、以下のプレゼンテーションではヤンバルの広範囲で観察した複数の事例を包括的に(ぼやかした形で)紹介して参ります。 。

年中行事とライフサイクル―生の実践

文化人類学では人生を生から死に至るひとつのサイクル(循環)と見做してこれを「ライフサイクル」と呼び、各文化がこれをどのように区分けたりプログラム化したりするかを探究しますが、私のフィールドであるヤンバルの諸集落では、年毎に繰り返される年中行事によってこのライフサイクルが秩序建てられています。もちろんこれはここヤンバルに限られたことではなく、琉球列島のほぼ全域にも、日本本土の各地にも、同様の秩序化は観られます。ライフサイクルは個々人を共同体に帰属せしめる文化的な基盤となり、年中行事はこうした基盤と日常生活をつなぐイベント=「文化的実践」として捉えてもよいかもしれません。
 で、地元ヤンバルでは概ね次のような年中行事が確認できます:
これは現地で私が確認した主要なイベントを総括したリストで、集落によってはこの他にも行事が展開されているかもしれません。いずれにしても、こうしてカレンダーに示され恒例化した行事への義務的な参加を通して、「命の大切さ」が絶え間なく強調されてきたわけです。